光輝会の設立に向けて

2017年12月27日
中央大学 研究開発機構 機構フェロー教授 辻井重男

光輝会設立への想い
 個人的な感慨で恐縮ですが、私は、昭和33年(1958年)NECに入社して、情報伝送の開発を始めました。日本が高度成長に向けて立ち上がろうとする時代でした。今、日本は、段々坂を下っているようで、このまま、現世とお別れするのは、私にとって耐え難い思いです。これまでの経験を活かし、多少でも社会貢献ができればと念じております。
 日本には、もう力は残されていないのでしょうか?
 そんなことはありません。働き盛りの男性については、言うまでもありませんが、女・高・外・ポスドク・AIロボットの活躍に大いに期待できる筈です。女性の活躍度も上がってはきていますが、まだまだ、諸外国に比べて低い状況です。優秀な外国人やAIロボットへの期待と合わせて、大いに期待できるのが、高齢者の活動です。
 後期高齢者になって、頭部の表面だけでなく中身も輝いている人は、私の周囲に少なくありません。

中央大学研究開発機構における高齢研究者の活動
 中央大学には、1997年、研究開発機構と言う、外部資金により研究活動を行う組織が設立され、私が初代機構長を務めました。当初は、日本に1万7千人いると言われるポスドク数名に研究の場を設け、政府系プロジェクト研究などを行っていましたが、その内、高齢者の仲間が、増えてきました。
例えば、

山 口   浩  元NECソフト取締役(79歳):最近3年間で、国際会議論文6件発表
片 山 卓 也  前北陸先端科学技術大学院大学学長(78歳):法令工学の研究推進
白 鳥 則 夫  東北大学名誉教授・情報処理学会元会長(71歳):IoTなどの研究推進
山 沢 昌 夫  富士通元社員・MPKC特別参与(71歳):ブロックチェイン・暗号通貨研究を推進
才 所 敏 明  東芝 元情報セキュリティ研究センター長(69歳):メール・IoTの安全性向上研究
佐 藤   直  情報セキュリティ大学院大学名誉教授(66歳)・マイナンバーカードの利用拡大
近 藤   健  中央コリドーの発展に貢献(78歳):最近は、ブロックチェイン・暗号通貨を探求

等が、活き活きと議論を展開し、研究を進め、学会発表などを行っています。その状況を観るにつけ、高齢者達に活動の場を設けることの効果を痛感しています。これは、研究分野だけではなく、いろいろな分野でも同じでしょうが、以下、研究分野について考えてみます。

 高齢女性の代表は若宮正子さんでしょう。2017年12月27日の日本経済新聞朝刊に、「日本のITを代表する今年の人を選ぶとしたら、この人を推したい。若宮正子さん。米アップルの世界開発者会議でティム・クックCEOから「82歳の開発者」と紹介された。60歳からパソコンを学び、高齢者向けのゲームアプリを編み出して脚光を浴びる。(コメンテーター村山恵一)」という記事が出ていました。
 また、暗号理論と情報セキュリティの分野で、日本を代表する女性研究者佐古和恵氏は、電子情報通信学会の副会長という大役も果たしておられます。

日本の研究レベルの衰退と高齢研究者の役割

 最近、日本の大学の研究環境は悲惨な状況です。21世紀になってからの、ノーベル賞受賞数は、米国に次いで、世界2位ですが、それらの多くは、20世紀になされた研究成果です。最近では、論文が引用される数は、スペイン、イタリア、オーストラリアに抜かれている有様です。これでは、大隅ノーベル賞受賞者が、訴えておられるように、20年後のノーベル賞受賞者は日本からは出ないでしょう。ノーベル賞だけが研究成果ではありませんが、日本の研究力が落ちていることは確かです。
 その理由は
1)研究費の減少。
2)短期的視野からの実用化研究が要求されすぎている。
3)若い研究者の多くが、3年~5年の任期付きで雇用されているので、じっくり研究できない。
 等です。要するにお金も足りないが、研究の自由がなくなっているのが問題です。昔、大蔵省のお役人が、「国立大学の講座費と言うのは一体何だ?」と言ったという話を聞いたことがあります。額は少なくても、自由に使える研究費が大事なのですが、そのことが研究費を配る人には理解し難いようです。
 研究者達は、研究費獲得の為の作文に追われ、数十倍の競争を勝ち抜いて研究資金を獲得すれば、今度は、研究の進捗状況を問われる日々となります。研究計画という用語は、本来、語義矛盾なのです。道路工事のように計画通り進んでいる研究からは画期的な成果は生まれません。しかし、最近の政府系プロジェクトでは、1年に何度も、進捗状況をチェックされたりします。このような嘆かわしい状況は、当分変わらないでしょう。研究文化は分野を跨る学際的融合文化であるのに対して、会計文化は切り分け文化であることに、研究者は悩まされ続けています。

 そんなことと高齢研究者の役割はどう関係するのだ?

 高齢研究者は、エネルギーは、若い時ほどではないとしても、自由な時間も多く、経験もあり、視野も広くなっています。概念構築能力は70代がピークと言う脳科学の説も出ています。
 私は、企業などの研究者・技術者の人生行路をMSMSの4段階に分けています。

M:学生時代=Moratorium時代、20代前半まで
S:現役の研究者・技術者時代=Specialist時代、40代前半位まで
M:管理職時代=Manager時代、定年退職するまで
S:定年後の自由な研究者時代=Generalized Specialist

 定年後、キョウヨウもキョウイク(今日用も今日行く所)もないという人が増えています。本人の為にも社会の為にも不幸なことです。人は、Motivationがなくなると生きる力が衰えがちになります。研究者・技術者の場合、Manager時代にも、細々とでも、専門的関心を深めておき、定年後に備えておいてはどうでしょうか。高齢者はそれなりに、経験を重ね、視野も広がっています。

 今話題のブロックチェイン・暗号通貨の提案に見られるように、楕円暗号による電子証明という専門的知識に加えて、欲と二人連れの総当たり計算と言う人間の本性に根ざした、広い視野の中でのアーキテクチャー・概念構築が求められます。
 また、東浩起著の「一般意思2.0-ルソー・フロイト・グーグル」に述べられているように、情報技術による思想・哲学の具現化傾向もあり、研究者・技術者にも広く長い視野が求められる時代となりました。
 光輝会設立の立案者仲間であるNEC OB 並木淳治氏(サイバーレーザー(株)常任監査役)は、電子情報通信学会から数年前に「非線形システムが社会を動かす」という本を出版されました。非線形ダイナミクスの安定性、自律性、システム干渉等から指導者無しの社会の秩序形成、制御を書いたものです。「一般意思2.0」とも通じるところがありそうです。
 と言う訳で、学際的活動が求められる時代の高齢研究者の活躍の場は広がっています。

 高齢者の活動には、いろいろな分野・ケースがあるでしょうが、それは、今後、皆さんと議論を深めることとして、取りあえず、私の関心の深い分野に限って、光輝会設立の趣旨を述べさせて頂きました。皆様からの寄稿をお待ちしております。

今後のシンポジウム開催や具体的活動については、

https://c-faculty.chuo-u.ac.jp/~tsujii/koukikai.htmlを御参照、或いは、
tsujii@tamacc.chuo-u.ac.jp,  k.gohgam@tamacc.chuo-u.ac.jp にお問い合わせ下さい。

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