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meter - hellog〜英語史ブログ

最終更新時間: 2012-05-22 15:54

2011-07-02 Sat

#796. 中英語に脚韻が導入された言語的要因 [rhyme][alliteration][meter][stress][prosody][romancisation][french]

 英語の韻律の型の変遷は,英語の言語的変化そのものと連動している.
 古英語の典型的な韻律は,詩行に一定数の強勢が配される強勢韻律 (accentual meter) であり,かつ語頭子音を合わせる頭韻 (alliteration) に特徴づけられていた.ところが,中英語になると韻律の主流は古英語以来の強勢韻律に加え,詩行に一定数の音節が配される音節韻律 (syllabic meter) の要素が入り込んでくる.なおかつ,語末の母音(+子音群)を合わせる脚韻 (rhyme) が一世を風靡した.見方によれば,古英語から中英語にかけて韻律が180度の転換を経験したかのようであり,この転換の背後には相応の言語的変化があったのではないかと疑われる.
 古英語から中英語にかけての時代は,英語史において劇的な変化の時代だが,韻律の転換ににかかわる項目を厳選すれば以下の2点に絞り込める.

 (1) 屈折の衰退に伴い単音節語が増えた
 (2) フランス語からの大量の借用語により,最終音節あるいは最後から2番目の音節に強勢をもつ語が増えた

 まず (1) についてだが,古英語の後の強勢は,接頭辞を除き原則として第1音節に落ちた ([2009-10-26-1], [2009-10-31-1]) .この特徴は頭韻にとっては都合がよかったが,脚韻にとっては不都合だった.脚韻を担当する語尾部分が,強勢のない屈折語尾により占められることが多かったからだ.ところが,中英語期にかけて屈折が衰退してくると,それ自身が強勢をもつ単音節語が多くなる.これは頭韻にとって特に不利になる変化ではないが,脚韻にとっては有利は変化となった.また,屈折の衰退は付随的に前置詞や助動詞の発達を生みだし,統語的にも「前置詞+名詞」や「助動詞+動詞」のような弱強格 (iamb) が増加し,脚韻にとって好都合な条件が整っていった.
 次に (2) についてだが,これは,フランス語からの大量借用により,英語にフランス語型の強勢パターンがもたらされたということを意味する ([2011-04-15-1], [2009-11-13-1]) .語の後方に強勢をもつフランス借用語は脚韻にはうってつけの材料となった.この (1) と (2) の要因によって,全体として語の終わりのほうに強勢をもつ語が増え,脚韻に利用できる語彙資源が豊富になった.
 英語の詩における音節韻律と脚韻は,直接的にはフランス・イタリア詩の伝統に倣っての導入である.しかし,言語的に相応の受け入れ態勢が整っていなければ,中英語にみられたような円滑な導入と定着はなかっただろう.古英語から中英語にかけての言語変化は,新しい韻律を積極的に呼び寄せたとは言えずとも,それが活躍する舞台を設定したとは言えるだろう.

Referrer (Inside): [2011-11-26-1]

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2011-06-27 Mon

#791. iambic pentameter のスキャン [meter][chaucer]

 詩行の韻律分析 (scansion) は,規則適用能力というよりも美的センスが必要と言われることもある通り,一筋縄ではいかない.複数の scansion が可能な「問題のある」詩行も少なくなく,決め手に欠くという例もある.しかし,もっとも典型的とされるような詩行ではきれいに規則が当てはまるのも確かであり,少なくともこのような場合には規則の知識が報われる.
 Chaucer の iambic pentameter を例に,scansion の実際を手取り足取り教えてくれる教本に Glowka がある.Glowka に従い,iambic 詩行の scansion の手順を大まかに並べると以下のようになる.

 (1) 脚韻語に強勢を振る
 (2) 多音節語について強勢音節を仮に定め,その強勢音節を含む iamb を作る
   - 本来語では接頭辞でない限り第1音節に強勢が落ちることを念頭に
 (3) その他の詩脚で明らかに iamb となるものを見つける
   - 強勢が句の主要部(右側)に置かれるという Nuclear Stress Rule を念頭に
   - 強勢が複合語の第1要素(左側)に置かれるという Compound Stress Rule を念頭に
 (4) 無強勢の e の処理
   - 後続母音に呑み込まれて脱落する elision の可能性を念頭に
   - 前後の流音などに呑み込まれて脱落する syncopation の可能性を念頭に
 (5) その他の考慮
   - 特に第1,第3詩脚で trochaic substitution の可能性を念頭に ([2011-06-25-1])
   - 無強勢音節が連続して現われる anapest の可能性を念頭に
   - 第1音節を欠く headless line の可能性を念頭に

 もっとも典型的な詩行では,(1), (2), (3) の手順でおよそ scansion が完了する.上記の抽象的な手順では意味不明と思われるので,Glowka (31--35) で解説されている通りに,GP (ll. 19--20) の couplet をスキャンしてみる.

(1) 脚韻語に強勢を振る

	                               /
	Befil that in that seson on a day,
	
	                                 /
	In Southwerk at the Tabard as I lay


(2) 多音節語について強勢音節を仮に定め,その強勢音節を含む iamb を作る
	 x / |       |  x   /|         /
	Befil that in that seson on a day,
	
	x   /  |        | x  /|          /
	In Southwerk at the Tabard as I lay


(3) その他の詩脚で明らかに iamb となるものを見つける
	 x / |  x  / |  x   /|x  / |x  /
	Befil that in that seson on a day,
	
	x   /  | x   /  | x  /|x   / |x  /
	In Southwerk at the Tabard as I lay


 ・ Glowka, Arthur Wayne. A Guide to Chaucer's Meter. Lanham, Md.: UP of America, 1991.

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2011-06-25 Sat

#789. Chaucer の trochaic substitution [chaucer][meter]

 中英語の韻文形式の典型といえば,13世紀後半に始まる The Poema MoraleThe Owl and the Nightingale などの iambic tetrameter や,Chaucer に代表される iambic pentameter が挙げられる.この形式は弱強格 ( iamb ) の強勢交替を特徴とするが,あまりに規則正しい弱強格の繰り返しは単調さを招くために,時にこの規則が破られ強弱格 ( trochee ) の現われることがある.これは trochaic substitution と呼ばれ,中英語詩では珍しくない.
 例えば,次の Chaucer の詩行 (GP 105) では,第1詩脚で trochaic substitution が生じている.

An Example of Trochaic Substitution in Chaucer


 trochaic substitution により「強弱弱」という3拍子が生じることになるが,この3拍子自体は口語英語では普通のことだったし,Ormulum などの早い段階での中英語詩にも確認される.また,イタリア語詩など大陸の詩では2拍子と3拍子の繰り返しの形式が見られ,中英語の3拍子が突飛な形式なわけではない.
 詩行のどの位置(詩脚)で substitution が生じやすいかを調査した研究がある.以下は,Li (1995) の数値に基づいて Minkova (191) が提示している,Chaucer の韻文コーパス全体における substitution の比率である.

Trochaic Substitutions in Chaucer


 一般に詩行は頭部で自由度が高く,尾部で自由度が低い.尾部で融通が利かないのは,脚韻位置であり,脚韻を担う音節は必ず強勢を伴わなければならないという制約があるためである.一方で,頭部は気楽に始められるために,融通が利きやすい.CT でとりわけ substitution 比率が高いのは,同作品における会話体の豊富さを示しているように思われる
 Minkova (191) より,各詩脚からの substitution の例を挙げよう.

- Redy to wenden on my pilgrimage (GP 21)
- Of his offryng and eek of his substaunce. (GP 489)
- Ful semely after hir mete she raughte. (GP 136)
- The smylere with the knyf under the cloke (KnT 1999)


 ・ Minkova, Donka. "The Forms of Verse" A Companion to Medieval English Literature and Culture: c.1350--c.1500. Ed. Peter Brown. Malden, MA: Blackwell, 2007. Malden, MA: Wiley-Blackwell, 2009. 176--95.
 ・ Li, Xingzhong. "Chaucer's Metres." Diss. U of Missouri, Columbia. 1995.

Referrer (Inside): [2011-06-27-1]

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