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idiolect - hellog〜英語史ブログ

最終更新時間: 2012-05-22 15:54

2010-06-16 Wed

#415. All linguistic varieties are fictions [variety][idiolect]

 本ブログでは英語の変種 ( varieties ) を取り上げる機会が多いが,変種とはそもそも捉えがたい存在である.Algeo によると,言語における変種はすべて虚構であり抽象化である.

ALL LINGUISTIC varieties are fictions. Because language is constantly changing, adapting to the circumstances of its use and the moods of its users, every instance of use is unique and different from every other. (3)


 英語一つをとっても,国際的に広く用いられている英語 ( international English ) の変種を言語的に明確に定義することはできない.国際英語を特徴づけるおよその核があるということは誰しもがわかっている.しかし,国際英語全体にしろその核にしろ言語として刻一刻と揺れ動いているのであり,正確なスナップショットを捉えることは不可能である.同じことは,British English や London English といった地域変種,Old English や Middle English といった通時変種,学生英語や女性英語といった社会変種など,あらゆるレベルの変種についてもいえる.究極的には個人変種 ( idiolect ) ですら刻一刻と揺れ動いているのであり,正確なスナップショットを捉えることはできない ( see also [2009-12-11-1] ).
 これが言語の現実であるから,言語を変種へ区切ろうとする営みはすべて抽象化の作業であり,結果として区切られた変種はすべて虚構である.だが,Algeo も言っているように,それは便利な ( useful ) な虚構である.変種に特定の名前をあてがい,それが言語的実在に対応するのだという仮定を立てない限り,もとより言語学は成り立たない.「言語」や「変種」といった用語を曖昧に用いることが許されるがゆえに,言語研究が可能になるのだから不思議である.言語学においても「変種」などの用語の定義はもちろん重要だが,定義というスナップショットでは捉えきれないものを相手にしているということは覚えておく必要がある.一つの視点として定義というスナップショットを利用すべき場面もあれば,定義にこだわらずにある用語を自由でルースに用いるべき場面もあるのだろう.
 449年より前の段階の言語を English と呼ぶのは適切かどうか,Tok Pisin を English と呼ぶのは適切かどうか.このような問題は用語の問題に過ぎず,現実的には問われている文脈に応じて臨機応変に Yes か No と答えておけばいいのではないか.もっとも,一貫した態度を決めなければならない状況というのもあるのかもしれないが.
 本記事は Algeo の "meditative" な論文を読んだ感想だが,つられて "meditative" な話になってしまった.

 ・ Algeo, John. "A Meditation of the Varieties of English." English Today 27 (July 1991): 3--6.

Referrer (Inside): [2012-02-10-1]

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2009-12-11 Fri

#228. 英語変種のモデル (2) [variety][idiolect][elf][model_of_englishes]

 昨日の記事[2009-12-10-1]に引き続き,英語変種のモデルを掘り下げる.
 [2009-12-10-1]で示したモデルによれば,英語話者がある状況において用いる変種 ( variety ) は,"the common core" と六つのパラメータの値で記述できる.逆にいえば,"the common core of English" に六つのパラメータの値を掛け合わせると,ある一つの変種が定まる.
 だが,このように定まった変種の内部においても,まだ変種は現れうる.例えば,同じ話者が同じ環境・文脈で,意味的・語用的な差を含めずに,二つ以上の表現を選択肢としてもつ場合がある.Quirk et al. (30) は次のような例を挙げている.

He stayed a week or He stayed for a week
Two fishes or two fish
Had I know or If I had known


一方が他方よりも形式的である,などということが統計的にはあり得るかもしれないが,それほど明確な差ではない.この場合,六つのパラメータによって定められた変種の内部に,ミクロなレベルでの変種が潜んでいること ( varieties within a variety ) を示唆する.このミクロな変種内の構造は,以下のようにモデル化されている.

Varieties within a Variety

 ある一つの変種,例えば,イギリスの標準英語で,英語史の講義を口頭で比較的インフォーマルな言葉遣いおこなっている場合の英語変種を想定しよう.英語史の専門用語を用いる場合には,およそ固定化している用語が多いので,"relatively uniform" なミクロ変種を用いていることになる.しかし,講義は専門用語だけで進めるわけではなく,特にインフォーマルな言葉遣いで進めている場合には,くだけた話しを含めることもあるだろう.強調語を使う必要が生じたときに,very, indeed, not a little, really などの比較的多様な ( "relatively diverse" ) 表現が選択肢として考えられるが,これは講義者個人のもっている選択肢というよりは,講義者を含めた言語共同体で広く共有されている選択肢 ( "variation in community's usage" ) と考えるべきだろう.だが,講義者個人の口癖として very, very, very, very, veryto a gigantic extent といった変わり種の強調語を選択肢としてもっている場合 ( "variation in individual's usage" ) ,このいずれを用いるかは完全に個人的な選択の問題である.
 variety の所在を突き詰めると,結局,個人語 ( idiolect ) に行き着いてしまうようだ.

 ・Quirk, Randolph, Sidney Greenbaum, Geoffrey Leech, and Jan Svartvik. A Grammar of Contemporary English. London: Longman, 1972. 30--32.

Referrer (Inside): [2010-06-16-1]

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