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grammar - hellog〜英語史ブログ

最終更新時間: 2012-05-22 15:54

2012-01-04 Wed

#982. アメリカ英語の口語に頻出する flat adverb [adverb][adjective][register][corpus][ame_bre][americanisation][colloquialisation][grammar][flat_adverb]

 昨日の記事「#981. 副詞と形容詞の近似」 ([2012-01-03-1]) の最後に触れた単純形副詞 (flat adverb) を取り上げる.対応する -ly 形が並存している場合,flat adverb は一般に略式的あるいは口語的であることが多いといわれる.規範的な観点からは,-ly を伴う語形が標準形であり,flat adverb は非難の対象とされるので使用を控えるべしとされるが,LGSWE (Section 7.12.2) によれば,以下のような例は会話コーパスでは普通に見られるという.

 The big one went so slow. (CONV)
 Well it was hot but it didn't come out quick. (CONV)
 They want to make sure it runs smooth first. (CONV†)


 特に goodreal を副詞として用いる語法は,AmE の口語で広く聞かれる.LGSWE (Section 7.12.2.1) の記述によれば,goodwell の意味に用いる例は,AmE の会話で圧倒的によく見られ,一方で書き言葉や BrE では稀である.really の代用としての real については,AmE の会話では really の半分ほどの頻度で使用されているというから,相当な普及度だ.コーパス中の絶対頻度でいえば,これは BrE の会話における really の頻度に匹敵するという.なお,BrE では real のこの用法は皆無ではないが,稀である.両者の例を LGSWE からいくつか挙げよう.

 It just worked out good, didn't it? (AmE CONV)
 Bruce Jackson, In Excess' trainer said, "He ran good, but he runs good all the time. It was easy." (AmE NEWS)
 It would have been real [bad] news. (AmE CONV)
 I have a really [good] video with a real [good] soundtrack. (AmE CONV)


 例のように,good は動詞と構造をなして述部を作る用法,real は形容詞を強調する用法が普通である.
 以上のように,現代英語において flat adverb はアメリカ英語の口語で用いられる傾向が強いことがコーパスから明らかとなっているが,この傾向と関連して[2011-01-12-1]の記事「#625. 現代英語の文法変化に見られる傾向」で触れたアメリカ英語化 (Americanisation) と口語化 (colloquialisation) の潮流を想起せずにいられない.今後,good あるいは real に限らず,英語全体として flat adverb の使用が拡大してゆくという可能性があるということだろうか.合わせて,[2010-03-05-1]の記事「#312. 文法の英米差」の (5) も参照されたい.

 ・ Biber, Douglas, Stig Johansson, Geoffrey Leech, Susan Conrad, and Edward Finegan. Longman Grammar of Spoken and Written English. Harlow: Person Education, 1999.

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2011-10-06 Thu

#892. 文法の父 Dionysius Thrax の形態論 [derivative][compound][grammar][word_formation]

 [2011-09-27-1]の記事「#883. Algeo の新語ソースの分類 (1)」で,西洋における体系文法の父と称されるギリシアの文法学者 Dionysius Thrax (c100BC) に言及した.彼の著わした Techne Grammatike は,小冊子ながらも,千年以上もの間標準テキストとして用いられた,極め付きのロングセラーである.今回は,Davidson による英訳により,Thrax が語形成について述べている箇所を読んでみた.ギリシア語の知識および当時の世界観を持ち合わせていないので,Thrax の語形成の分類は随分と独特に見えるが,英語の語形成を考える上で何か参考になるかもしれないので,概要を記したい.
 Thrax は,Section 14 で名詞には2つの Species があると論じている.1つは primitive で,もう1つは derivative である.現代の形態論の用語でいえば,前者は語根あるいは simplex,後者は派生語あるいは complex に相当するだろう.派生語は7種類が区別されているが,その基準は意味だったり機能だったりで仕分けに統一がない.その7つとは,Patronymics, Possessives, Comparatives, Diminutives, Nominals, Superlatives, Verbals である.これらにより派生名詞が作り出されることになる.
 一方,Thrax は名詞には3つの Forms があると論じている.1つ目は simple で,2つ目は compound で,3つめは super-compound である.それぞれの例として,Memnon, Agamemnon, Agamemnonides を挙げている.compound には4種類が区別されており,語形成論としては興味深い.(1) 2つの完全語からなるもの (ex. Cheirisophos), (2) 2つの不完全語からなるもの (ex. Sophokles, (3) 1つの不完全語と1つの完全語からなるもの (ex. Philodemos), (4) 1つの完全語と1つの不完全語からなるもの (ex. Periklês) .
 Thrax の語形成論は独特であり,直接これを英語に応用できるわけではないが,自由形態素と拘束形態素の区別を意識している点は注目に値する.primitive や simple という用語も,英語形態論に導入すると便利そうである.
 派生と複合を明確に区別する Thrax の伝統は,現代英語形態論にも概ね受け継がれているようだ.

 ・ Davidson, Thomas, trans. "The Grammar of Dionysios Thrax." Journal of Speculative Philosophy 8 (1874): 326--39.

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2011-03-12 Sat

#684. semantic prosody と文法カテゴリー [semantic_prosody][grammar][corpus][intensifier]

 昨日起こった東北地方太平洋沖地震につきまして,被災者の方々に心よりお見舞い申し上げます.
 [2011-03-03-1]の記事で,semantic prosody と文法カテゴリーとの間に関連があるという可能性に言及した.これは,happen の類義語,utterly を含む強意語の semantic prosody をコーパスによって調査した Partington の論文で指摘されていることである.
 Partington は happen, set in, occur, come about, take place を調査し,この語群には程度の差はあれ,確かに unfavourable な semantic prosody が付随しているという証拠を挙げた(最も unfavourable なのは set in だという)(144) .同様に,utterly, absolutely, perfectly, totally, completely, entirely, thoroughly を調査し,それぞれの semantic prosody あるいは semantic preference を抽出した (148) .そして,いくつかの語句に付随している音色には,favourable vs. unfavourable という単純な価値基準の対立ではなく,一般には文法カテゴリーとして言及されるような特徴の対立が関与しているということがわかった.
 具体的に言えば,happen は non-factuality を示す傾向が強い.法,疑問,条件といった文法カテゴリーとの関与が認められ,it is unclear whyto see what などの表現とともに用いられることが多い (140--41) .一方で,take place はむしろ factuality を示す傾向が強く,生じると予定されていることが実際に生じるという含意で用いられることが多い (143) .
 強意語では,utterly は unfavourable semantic prosody を示すだけでなく,特徴の不在や状態変化を表わす語を修飾する傾向がある ( ex. utterly helpless / unable /forgotten / changed / different / destroyed ) .同じ傾向は,totally, completely, entirely にも見られる.entirely には (in)dependency というカテゴリーも関与しており,entirely dependent / self-sufficient / isolated などと用いられることが多い.absolutely は superlative を含意する語を修飾する ( ex. absolutely delighted / splendid / appalling ) .
 factuality, absence, change, dependence, superlative というキーワードは,通常,文法カテゴリーに関連して言及されるラベルだが,語の意味,特に semantic prosody や semantic preference として言及される意味と深く関わっていることがわかる.
 考えてみれば,語彙と文法の結びつきという視点は,新しくもなければ珍しくもない.例えば,ある動詞は受け身でしか用いられないとか,否定で用いられることが多いなどという事実は当たり前のように指摘されてきたし,学習者用辞書に広く反映されている.ある種の意味領域を表わす語が,後続する that 節内の動詞に subjunctive を要求するという文法項目も長い間論じられてきた ([2010-04-07-1]) .語彙と文法の関係は英語学ではよく知られていた事実だが,コーパス言語学という新しい角度からも同じ事実にたどり着いたということだろう.ただし,コーパス言語学の貢献は,factuality や absence などのカテゴリーを 0 か 1 かの binary な問題としてではなく,probabilistic な問題として取り扱うことができる点にあるように思われる.
 英語史あるいは通時言語学の観点からは,ある語が文法カテゴリーと結びつきが認められる場合に,いつ,どのようにその結びつきが生じたのかに興味がある.例えば happen は英語史のいつ頃から unfavourable で non-factual な含蓄を得たのか.もしある時期にそのような含蓄を帯び始めたのであれば,その意味の場 ( semantic field ) を構成する他の類義語との関係も合わせて考える必要がある.そして,類義語との関係ということになれば,occur など借用語の圧力も考慮に入れなければならない.借用語による意味の場の再編成 → semantic prosody の滲出 → 文法カテゴリーへの結びつき,という流れがあるとすれば,おもしろい.speculation にすぎないが,例えば[2009-08-17-1]の記事で触れた語種と仮定法現在との関係にこの流れが見られないだろうか.

 ・ Partington, A. "'Utterly content in each other's company': Semantic Prosody and Semantic Preference." International Journal of Corpus Linguistics 9.1 (2004): 131--56.

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2010-03-05 Fri

#312. 文法の英米差 [ame_bre][grammar]

 綴字の英米差([2009-12-27-1][2009-12-23-1]),発音の英米差([2009-11-24-1])に続き,今回は文法の英米差について主要なものを10点挙げる.

(1) gotten (AmE) / got (BrE)

 AmE: She's gotten into trouble in school.
 BrE: She's got into trouble in school.

(2) from ... through ... (AmE) / from ... to ... (BrE).AmE で through を使うと8月を含む意味になる.BrE ではこの慣用がないため,to だけでは8月を含むのか否かが不明.BrE で「含める」読みにするには,明示的に inclusive を使うことが多い.

 AmE: The tour lasted from May through August.
 AmE and BrE: The tour lasted from May to August.
 BrE: The tour lasted from May to August inclusive.

(3) 集合名詞の数の一致.AmE では形態が単数である限り単数扱いだが,BrE では形態が単数でも意味が複数であれば後者を重視して複数扱い.team, audience, board, committee, government, the public など.

 AmE: The Government has been considering further tax cuts.
 BrE: The Government have been considering further tax cuts.

(4) insist, recommend, suggest などが従える従属節における仮定法 (AmE) と should (BrE) の使用.ただし,BrE でも AmE の影響で仮定法の使用が普通になってきている.(see [2009-08-17-1])

 AmE: They insist that she accept the offer. (also increasing in BrE)
 BrE: They insist that she should accept the offer. (getting unacceptable in AmE)
 BrE (colloquial): They insist that she accepts the offer. (not accepted in AmE)

(5) AmE で副詞の代用としての形容詞.good, slow, awful, sure など.

 AmE: They pay them pretty good. (non-standard in BrE)
 BrE: They pay them pretty well.

(6) AmE で like の接続詞としての使用.BrE では as if が普通.

 AmE: It seems like we've made another mistake. (non-standard in BrE)
 BrE: It seems as if we've made another mistake.

(7) AmE のいくつかの変種で明示的な二人称複数代名詞 you all, y'all, yous(e) の頻用.

 AmE: I'll see y'all later. (South)
 AmE: How much did yous want? (Northeast, esp. New York City)
 AmE: We'll see you guys Sunday, okay? (informal)

(8) 現在完了と過去.AmE ではしばしば過去形が代用される.

 AmE: Dolly just finished her homework.
 BrE: Dolly has just finished her homework.

(9) AmE で out の前置詞としての使用.BrE では out of を用いる.

 AmE: I always look out the window.
 BrE: I always look out of the window.

(10) AmE で用いられる動詞の過去形の異形.BrE では括弧内の形態しかとらないが,AmE の口語では両方とりうる.

 dove ( dived ), fit ( fitted ), pled ( pleaded ), rung ( rang ), sung ( sang ), sunk ( sank ), snuck ( sneaked ), swum ( swam )

 ・ Svartvik, Jan and Geoffrey Leech. English: One Tongue, Many Voices. Basingstoke: Palgrave Macmillan, 2006. 166--69.

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