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        外国人留学生の司法修習



2018年に本法科大学院を修了し、1回目の受験で司法試験に合格した外国籍の人がいます。別の大学の学部を卒業した後、一度本国に戻っていましたが、再び来日して、本法科大学院の既習者試験に合格し、入学しました。日本に親族は全くいません。

在学中の在留資格は、「留学」ですが、5月の司法試験受験後に、「特定活動(就職活動)」に変更しました。平成28年12月16日の入管サイト
「大学等を卒業後就職活動のための滞在をご希望のみなさまへ」
http://www.moj.go.jp/nyuukokukanri/kouhou/nyukan_nyukan84.html
によれば、在留期間は6か月、原則として1回は更新が認められるので、1年間在留できます。資格外活動(アルバイト)も、「留学」と同様に週28時間以内認められます。

9月の合格発表後、1週間以内に司法修習生採用選考の申込書を出す必要があります。選考要項によれば、「日本国籍を有しない者については,国籍等,外国人住民となった年月日及び在留資格等が記載された住民票の写し」が提出書類のなかに含まれるので、一度本国に戻っていた本人は、すぐに再入国し(「みなし再入国」があるので、在留資格は残っていました)、知人の家を住所として住民登録をすることにより、書類を提出することができました。

ここまでは、本人が承知していたことですが、そこから先は、初めての体験でした。最高裁事務総局や入管に問い合わせても、「初めてのケースだ」というので、心配しましたが、司法修習の内定が出た後、在留資格を変更することができました。同じく特定活動ですが、指定書には、「裁判所法第四編第三章の司法修習生の修習に係る活動」と書いてあったそうです。在留期間は1年3か月、もちろん司法修習生はアルバイトができないので、資格外活動は許可されません。在留資格の変更許可申請書の書き方や添付書類は、入管のサイトにも掲載されていないので、窓口で指導を受けながらだったそうです。

この人の場合は、1回目の受験で合格しましたが、不合格の場合は、2回目の受験後に「特定活動(就職活動)」の在留資格が切れてしまうのではないか、それでは仮に2回目の受験で合格しても、住民登録を必要とする司法修習生採用選考の申込ができないのではないかという心配があります。なぜなら、「短期滞在」の在留資格で来日しても、在留カードの交付を受けて、住民登録をすることはできないからです(詳細については、拙著『国際家族法』、『外国人の法律相談チェックマニュアル』など参照)。

最高裁と法務省は、この件について、明確な情報提供をすべきです。外国人の司法試験受験者は、いわゆるオールドカマー(特別永住者)、中国残留孤児の子孫や日系人(定住者)などとは限らないからです。たとえば、オーストラリア日本法ネットワークが主催する日本の大学との模擬法廷の対抗戦は、英語と日本語の両方で開催され、オーストラリアで生まれ育った学生たちが日本語でも勝利したことがあるそうです。これに対し、日本で生まれ育った学生の日本語能力は、総じて悪化しており、私が期末試験の答案などを読んでも、本当に日本人なのかと思う程です。

そうなると論理的な思考能力の違いになるわけであり、今後も外国生まれで外国育ちの法科大学院生が在留資格の問題を抱える可能性は残っているように思います。



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