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        難民問題Q&A(奥田version)



2017年10月18日最終更新

 難民問題は、法律家の目から見て、非常に誤解の多い分野だと思います。2017年10月3日放送のTBSラジオ「荻上チキ・Session-22」)に出演した際には、その点について意を尽くすことができなかったので、このページを作成しました。

荻上チキ・Session-22【音声配信】2017年10月3日放送
 https://www.tbsradio.jp/187292

 さらなる詳細については、奥田安弘『国際家族法』(明石書店、2015年)第8章4「難民認定」をご参照ください。ただし、出版後に行政不服審査法が改正され、それに伴って入管難民法も改正されたので、改正後の難民不認定に対する不服申立てについては、下記をご参照ください。

難民審査参与員制度について
 http://www.moj.go.jp/content/001179862.pdf

 なお、上記のラジオ番組には、全難連(全国難民弁護団連絡会議)に所属する小田川綾音弁護士も出演していますが、このページに書かれた内容については、全難連はもとより小田川弁護士は、一切関知いたしません。


Q1:難民とは、どういう人たちのことですか?
Q2:日本では、どういうふうに難民申請をするのですか?
Q3:難民調査官は、どういう人がなるのですか?
Q4:難民審査参与員は、どういう人がなるのですか?
Q5:法務大臣は、なぜ難民審査参与員の多数意見を受け入れないことがあるのですか?
Q6:難民審査参与員に対する研修は行われていないのですか?
Q7:コンゴ民主共和国の反政府勢力メンバーの女性が政府側兵士から性的暴行を受けたのに、難民申請が不認定となり、さらに不服審査において、難民審査参与員から「狙われたのはあなたが美人だからか」と発言した問題について、参与員は、本来はどのような質問をすべきであったのですか?
Q8:日本は、そもそも難民を受け入れる気がないのではないですか?
Q9:法務省は、難民条約の解釈について、独自の基準を定めているのですか?
Q10:難民申請者の司法的救済としては、どのようなものがありますか?
Q11:難民を支援する弁護団は、海外の政治状況などをどのようにして調べているのですか?
Q12:難民認定を受けなかったけれども、人道上の配慮により在留を認められた人は、難民と同じ扱いを受けるのですか?

Q13:難民申請は、本当は日本での就労が目的ではないのですか?
Q14:難民申請者が不認定処分を受けても、難民申請を繰り返す例が多いようですが、なぜそのようなことが可能なのでしょうか?


Q1:難民とは、どういう人たちのことですか?

 難民は、単に外国で迫害を受けて、日本に逃げてきた人のことではありません。難民条約は、難民を次のように定義しています。
人種、宗教、国籍若しくは特定の社会的集団の構成員であること又は政治的意見を理由に迫害を受けるおそれがあるという十分に理由のある恐怖を有するために、国籍国の外にいる者
 ここでは、2つの点が重要です。第1に、「迫害を受けたこと」ではなく、「本国に戻ったら、迫害を受けるおそれがあること」が重要です。たとえば、かつて現に迫害を受けたことがあっても、今は本国が安全であれば、難民ではありません。逆に、まだ迫害を受けたことがなくても、日本にいる間に、本国の政治状況に変化があり、今戻ったら、迫害を受けるおそれがあれば、難民となります。

 第2に、迫害を受ける理由が重要です。経済的に苦しいために避難した「経済難民」、地震などの災害のため避難した「災害難民」、これらは難民条約にいう難民ではありません。「人種、宗教、国籍、社会集団の構成員、政治的意見」のいずれかを理由とする「政治難民」だけが、難民条約にいう難民となります。

 難民認定とは、この難民条約にいう難民に該当するかどうかを判断するための行政手続であり、難民申請とは、難民認定を求めることです(入管難民法2条3の2号、61条の2)。

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Q2:日本では、どういうふうに難民申請をするのですか?

 難民認定の申請書は、各国語版(日本語に英語、アラビア語、スワヒリ語など28の言語で対訳がついたもの)が用意されているので、多くは自分の判断で申請書を記入し、各地方入管に提出します。リンク

 難民調査官のインタビューを受けた後、報告書が本省(法務省)の入管局に送られます。しかし、大部分は不認定処分を受けます。たとえば、2016年の申請者数は1万901人ですが、難民認定を受けたのは26人にすぎません。

 不認定処分に不服があれば、審査請求をして、難民審査参与員(難民調査官が補助)による審査を受けます。2016年には、約半数の5197人が審査請求をしました。この段階で弁護士がつくことがありますが、全体の1割にも及びません。

 難民審査参与員が意見書を提出して、法務大臣が最終判断(裁決)をします。しかし、大部分は請求棄却です。2016年に不認定処分が覆ったのは、わずか2人です。

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Q3:難民調査官は、どういう人がなるのですか?

 難民調査官とは、難民認定に必要な事実の調査などをするために、法務大臣が指定した入国審査官のことです(入管難民法2条12の2号)。要するに、普通の入管職員が「難民調査官」という肩書を得て、事実の調査(主に難民に対するインタビュー)をします。

 難民調査官の主な職務は、事実の調査です。最終的に難民認定の判断をするのは、法務大臣(本省の入管局幹部)です。たとえば、家裁の調査官も、その職務は事実の調査であり、法令の適用解釈は、裁判官が行います。

 「調査官」という肩書から、法律の専門家と思うのは、全くの誤りです。法律のプロとは、裁判官や弁護士など、法律の適用解釈をする法曹関係者のことであり、行政の事務職員が法律の条文や行政手続を単に知っているだけでは、法律のプロとはいいません。ただし、難民調査官による事実の調査は、主に難民に対するインタビューであり、その難民調査官の難民条約に対する理解が不十分であるため、不適切なインタビューが行われているという問題点は、従来から指摘されています。

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Q4:難民審査参与員は、どういう人がなるのですか?

 入管難民法では、難民審査参与員について、次のように規定しています(61条の2の10第2項)。
難民審査参与員は、人格が高潔であつて、・・・審査請求に関し公正な判断をすることができ、かつ、法律又は国際情勢に関する学識経験を有する者のうちから、法務大臣が任命する。
 実際には、大学の研究者、元外交官、元判事、元検事、弁護士、NGOメンバーなどが関係団体から推薦を受けて選ばれます。2017年9月時点で、78名が任命され、東京入管では63名、名古屋入管では9名、大阪入管では6名が3人1組で不服申立ての審査にあたっています。

 参与員の任期は2年ですが、再任を妨げず、非常勤です(入管難民法61条の2の10第3項・4項)。少し古い資料ですが、参与員の報酬は、1回の審理につき、2005年5月から11月までは1万9700円、12月以降は1万9600円との答弁書が国会に出されています。 リンク

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Q5:法務大臣は、なぜ難民審査参与員の多数意見を受け入れないことがあるのですか?

 法務大臣は、難民審査参与員の意見を聴いて裁決をしますが(入管難民法61条の2の9第3項)、それに拘束されるわけではありません。入管局のウェブサイトでも、意見を「尊重」するが、「法的拘束力がない」と書かれています。
 http://www.moj.go.jp/nyuukokukanri/kouhou/nyukan_nyukan58.html

 参与員制度が設けられた2005年からの8年間は、参与員の多数(2人以上)が「難民相当」とした84名全員について、不認定処分が覆りました。しかし、2013年からの3年間は、参与員の多数が「難民相当」とした29名のうち、約4割の13名が不認定のままでした。2016年は、参与員の多数意見も、2名についてのみ「難民相当」であり、その2名は不認定処分が覆っています。

 法務大臣が不服申立てを退ける際には、参与員の意見の要旨を開示しますが(入管難民法61条の2の9第4項)、多数意見と異なる裁決をした理由までは明らかにしません。約4割が異なる裁決となったことを理由として、「これではとても意見を尊重しているとはいえないだろう。今の政権が難民認定に積極的に動いていないことも影響しているのではないか」との指摘を紹介する報道がありますが(東京新聞2017年6月11日朝刊)、憶測の域を出ません。「尊重」と「拘束」は別問題というしかありません。

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Q6:難民審査参与員に対する研修は行われていないのですか?

 上記(Q4)の国会答弁書によれば、難民審査参与員が出席を義務づけられている会議や研修会はありませんが、UNHCR(国連難民高等弁務官事務所)や特定非営利活動法人(難民支援協会?)から情報提供を受けているとのことですから、任意参加の研修会は開催されているようです。

 しかし、本来、参与員は「人格が高潔であつて、・・・公正な判断をすることができ、・・・学識経験を有する者」として任命されるわけですから、任命後の研修の有無を問う質問主意書が国会に出ること自体、本来は不適格な人も任命されていることを窺わせます。

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Q7:コンゴ民主共和国の反政府勢力メンバーの女性が政府側兵士から性的暴行を受けたのに、難民申請が不認定となり、さらに不服審査において、難民審査参与員から「狙われたのはあなたが美人だからか」と発言した問題について、参与員は、本来はどのような質問をするべきだったのですか?

 「反政府勢力」とはいっても、日本でいえば、要するに与党と政治的意見が異なる「野党」にすぎませんが、リーダー的存在ではないために、不認定になったようです。しかし、リーダーでなくても、「迫害を受けるおそれがあるという十分に理由のある恐怖を有するために」、本国に戻れないのであれば、難民条約にいう難民の定義に当てはまります。

 要するに、参与員は、難民条約の解釈に徹して、質問をするべきだったのです。あるいは、迫害を受けた理由が「政治的意見」ではないという趣旨だったのかもしれませんが、それにしても、質問の仕方が不適切であり、難民認定と無関係な質問をしていると受け止められても仕方ありません。性別による精神的迫害も、難民条約の定義に当てはまるとすれば、本国と日本で「二重の迫害」を受けているといえなくもありません。

 その他にも、「難民にしては、元気すぎる」とか、「飛行機に乗ること自体が難民とかけ離れている」という難民条約と無関係な発言があったり、「あなたは難民ではない」とか、「あなたの話は全く信用できない」という不服申立て自体を批判するような発言があったりするようです。 実例集(全難連作成)

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Q8:日本は、そもそも難民を受け入れる気がないのではないですか?

 難民認定と難民の受入れは、別問題です。「難民の受入れ」とは、難民認定を受けた者に在留を認めることを意味しますが、難民認定を受けたからといって、当然に在留資格が認められるわけではありません。

 不法滞在者が難民認定を受けたら、入管難民法上は、「定住者」という在留資格が認められることになっていますが、実際には、難民申請の遅延、第三国経由の入国、一定の犯罪歴、一定の退去強制事由のいずれかを理由として、当然には在留資格を認めず(61条の2の2第1項)、在留特別許可がなされることが多いようです(同条2項)。わが国では、難民認定を受けた人が在留特別許可も認められず、退去強制になった例は見当たりませんが、法律上は、それが可能だということです。

 難民条約も、合法滞在の難民の恣意的な追放を禁止するだけであり(32条)、不法移民の受入れを義務づけているわけではありません。ただし、迫害を受けるおそれのある国への送還は禁止されています(難民条約33条、入管難民法53条3項1号)。これをノン・ルフールマンの原則といいます。したがって、仮に退去強制にするとしたら、本国から避難した後に以前定住していたことのある国、あるいは受入れを表明している国などに送還することになるでしょう。

 たとえば、ドイツは、シリアなどからの難民が膨大な数に上っているため、2017年10月7日、難民受入数の上限を年間20万人とすることを目指す方針を発表しました。しかし、これは、不法移民の受入れの制限を意味するだけであり、難民申請の制限ではないとされています。 https://www.cnn.co.jp/world/35108534.html

 実際のところ、わが国への難民申請者のうち、不法移民は少数であり、多くは「短期滞在」などの合法的な在留資格で来日しています。たとえば、2016年の難民申請者1万901名のうち、正規の在留資格を有する人は9702名、非正規の不法移民は1199名となっています。

 正規の在留資格を有する人は、難民申請者として「特定活動」という在留資格に変更し、在留期間の更新を続け、難民認定を受けたら、「定住者」に変更するようです。しかし、在留期間の更新や変更は、通常の外国人と同様に「相当の理由」が必要ですし(入管難民法20条3項、21条3項)、退去強制事由についても、とくに難民だからといって優遇されるわけではありません(24条)。ただし、「永住者」への変更については、通常の外国人が10年以上の在留実績を必要とするところ、難民認定を受けた人の在留実績は、5年以上で足りるという運用がなされています(永住許可に関するガイドライン)。

 いずれにせよ、問題は、難民の受入れではなく、難民認定の審査において、難民条約の解釈を誤っているか、あるいは、そもそも条約の解釈をしようとせずに、独自の偏見によっているのではないか、という点にあります。難民認定がこのような状況では、難民の受入れも増えるわけがありません。難民受入れの「消極性」を問題にする前に、まず難民条約をきちんと解釈して、難民認定を行うことを要求すべきです。

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Q9:法務省は、難民条約の解釈について、独自の基準を定めているのですか?

 法務省が難民条約をどのように解釈しているのかは、申請書の質問事項から推測することができます。 リンク

 たとえば、「あなたが本国に帰国するとすれば、いかなる事態が生じますか」というように、迫害を受けるおそれについては、一般的な質問であるのに、過去の迫害については、「あなたは・・・逮捕、抑留、拘禁その他身体の拘束や暴行等を受けたことがありますか」、「あなたの家族は・・・逮捕、抑留、拘禁その他身体の拘束や暴行等を受けたことがありますか」というように、詳しく質問しています。これらは、過去に迫害を受けた経験を重視し、そのような経験がない場合は、難民認定を受ける可能性が低い、というメッセージを発しているように思われます。しかも、これらは、難民条約にいう迫害が身体的なものに限られ、精神的な迫害(言論の弾圧など)を含まないかのような印象を与えます(日本の裁判所は、そのような解釈をしていますが、疑問です)。

 また、「あなたは本国政府に敵対する組織・・・に属していましたか」、「あなたは本国政府に敵対する政治的意見を表明したり、行動をとったことがありますか」、「あなたに対して逮捕状の発付又は手配がなされていますか」、「来日前、刑法犯罪を犯したことにより警察に逮捕され、検察官に起訴されたことがありますか」という一連の質問は、本国において相当過激な行動をとっていた場合には、難民認定の可能性が高いが、単なる「野党の党員」という程度では、可能性が低いというメッセージを発しているように思われます。

 本当に法務省がこのような解釈をしているとしたら、それは、誤った条約解釈であり、難民認定の可能性を不当に狭めるものです。予断を持つことなく、客観的な条約解釈に徹すること、これが今最も求められていることです。ただし、それは、法務省を批判する側にも求められます。

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Q10:難民申請者の司法的救済としては、どのようなものがありますか?

 難民不認定の処分に対しては、取消訴訟を提起することができます。取消訴訟は、行政上の不服申立てと並行して、直ちに提起することも認められています(行政事件訴訟法8条1項本文)。ただし、司法においても、不認定処分が取り消された例は、それほど多くありません。

 たとえば、判例検索ツールでヒットした2016年中の26件をみても、不認定処分が取り消されたのは、3件にすぎません。また、不認定処分が取り消されたケースのうち、2件では、最初の処分の当時よりも「本国の治安状況は大きく改善されている」として、判決確定後の難民審査において、再び不認定処分がなされています(毎日新聞2017年6月13日)。もちろん、これは極めて稀な例ですが、行政がこのように司法判断を無視することは、大いに疑問です。

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Q11:難民を支援する弁護団は、海外の政治状況などをどのようにして調べているのですか?

 各国の政治状況については、法務省の「難民関係公表資料」のサイトにおいて、米国国務省と英国内務省の報告書の日本語訳が掲載されています。もちろん、正確な内容や最新版は、英語の原文に当たる必要がありますが、法務省も、難民申請に一定の便宜を図っているといえます。 リンク

 また全難連のサイトでは、各国の情報を検索するサイトへのリンク集が設けられています。ただし、英語などの情報に限られます。
 http://www.jlnr.jp/coi/index.html ⇒ 「国情報」

 弁護団は、これらの情報に加えて、外務省の海外安全情報、本国の新聞など、あらゆる手段を使って、情報収集をしたうえで、審査請求や取消訴訟の際に、証拠資料として提出します。

 しかし、裁判官や難民審査参与員、難民調査官などがこれらを資料をきちんと理解できているのかは、疑問です。情報は十分に与えられているのです。問題は、その先の理解です。いくら弁護団が情報を証拠資料として提出しても、それを理解するための幅広い教養を持ち合わせていなければ、これらの情報は、単に弁護団が自分の都合の良いものだけを集めたと思われることでしょう。

 想像してみてください。難民条約は、「迫害を受けたこと」ではなく、「本国に戻ったら、迫害を受けるおそれがあること」を難民の要件としています。刑事事件や民事の損害賠償請求などでは、主に過去に起きた事実をもとに判断しますが、難民事件では、将来起きる可能性のあることを判断しなければなりません。行政や司法で難民問題に携わる人々は、そのような難民事件の特殊性を本当に理解しているのか、過去の自分の経験だけで他の事件と同じような処理をしていないのか、これらの点をもう一度洗い直すべきです。

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Q12:難民認定を受けなかったけれども、人道上の配慮により在留を認められた人は、難民と同じ扱いを受けるのですか?

 法務省は、2016年において「難民と認定しなかったものの、人道上の配慮を理由に在留を認めた者は97人」としています。これは、難民認定を受けた28人(不服申立ての結果、不認定処分が覆った2人を含む)よりも、かなり多い数です。

 実は、難民不認定処分をする際にも、不法滞在の申請者に在留特別許可をするかどうかは必ず判断されます(入管難民法61条の2の2第2項)。したがって、難民申請の結果は、次の4つに分かれます。①難民認定を受け、自動的に「定住者」の在留資格を得た人、②難民認定を受け、在留特別許可が認められた人(Q8)、③難民不認定処分を受けたが、在留特別許可が認められた人、④難民不認定処分を受け、在留特別許可も認められなかった人。

 しかし、在留を認められたとはいえ、難民認定を受けた人と不認定処分を受けた人は、大きな違いがあります。政府の委託を受けた難民事業本部から支援を受けることができるのは、難民認定を受けた人などに限定されているからです。
 http://www.rhq.gr.jp/japanese/profile/business.htm

 支援事業は、支援センターへの入所、各種援助金の支給、職業紹介や日本語教育など、多岐にわたっていますが、難民不認定となった人たちは、在留が認められても、何の支援も受けられず、その落差は相当大きいといえます。

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Q13:難民申請は、本当は日本での就労が目的ではないのですか?

 正規の在留資格を有する人は、難民申請という「特定活動」の在留資格に変更しますが(Q8)、さらに申請から6か月を経過した後は、就労を可能とする「特定活動」への変更を認める運用が2010年3月から開始しています。

 近年は、とくに「留学」や「技能実習」の在留資格を有する者からの難民申請が急増しており、これは、上記の運用変更により就労を目的とした難民申請の濫用だという声が高まっています。さらに、難民申請者数が2010年に1202名であったところ、2016年には1万901名まで増え、本来の難民救済に支障が生じているとの指摘もあります。

 しかし、これについては、問題を整理する必要があります。まず、もともと難民申請者の半数以上は、正規の在留資格を有する人たちでしたが、就労が認められない場合には、生活に困っていたという実態がありました。だからこそ、就労を可能とするよう、運用の変更がなされたわけであり、その必要性自体は、今も変わりません。

 難民申請者数が増え、本来の難民救済に支障があることは、それとは別の問題として考える必要があります。たとえば、難民不認定処分を受け、不服申立てによって不認定処分が覆らなかった人たちの多くが、再申請を繰り返して、難民申請中のままの状態を続けているようです。今は、このような再申請を繰り返する人には、就労や在留期間の更新を認めない措置がとられていますが、さらに「特定活動」の運用自体の見直しも検討されているようです(毎日新聞2017年10月2日)。

 しかし、それが本来救済を必要とする難民申請者の生活を脅かすことにならないよう願っています。難民申請者も人としての生活がある、という当然のことを忘れてはなりません。

*追記
 その後、「難民認定制度の適正化のための更なる運用の見直しについて」が公表され、難民認定の可能性を予測して、就労許可や在留許可の有無などを振り分ける期間が設けられることになりました。
 http://www.moj.go.jp/nyuukokukanri/kouhou/nyuukokukanri03_00555.html

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Q14:難民申請者が不認定処分を受けても、難民申請を繰り返す例が多いようですが、なぜそのようなことが可能なのでしょうか?

 不法滞在者が難民申請をした場合、退去強制手続が停止したり、少なくとも強制送還は停止されますが(入管法61条の2の6)、不認定処分を受けたり、審査請求も棄却する裁決を受けた場合は、退去強制令書にもとづき送還できるようになります。また、留学生や技能実習生などが特定活動の在留資格を受けている場合も、同様にその在留資格を失って、帰国せざるを得なくなるはずです。

 ところが、その強制送還が速やかに実施されず、その間に再び難民申請をする例が多いのが実情です。実際のところ、難民認定申請書の書式には、「再申請用」の書式が用意されている程です。リンク

 退去強制を受ける者をすぐに送還できない場合は、収容できますが(入管法52条5項)、入管六法の解説によれば、入国警備官は速やかに送還する義務があり(同条3項)、客観的に送還が可能であるのに退去の時期を遅らせ、収容を継続することはできないとされています。ところが、他方において入管のサイトでは、国費による送還は、国民の税金により賄われるため、できる限り自費出国を促すとしています。リンク

 自費出国は、不法滞在者の申請にもとづき許可することができますが(入管法52条4項)、現実には、自費で出国できるだけの資力がない者についても、なかなか国費による送還をしようとせず、長期間収容したり、仮放免して、不法滞在者のまま放置するケースが多いようです。

 仮放免されたのなら、また不法就労を始めて、まさに不法滞在者の思うつぼと思われるかもしれません。しかし、不法滞在者を雇った者は、誰であれ三年以下の懲役・三百万円以下の罰金に処せられるわけですから(入管法73条の2第1項)、そう簡単に不法滞在者を雇う者などいません。その結果、不法滞在者は、帰国したくても帰国できず、日本で生殺しの目にあっているわけです。いくら不法滞在者でも、これは、あまりに酷い状況であり、重大な人権侵害と思われます。

 そんな不法滞在者が一縷の望みをかけて、難民申請をして、せめて在留特別許可でも得たいと思うのは、自然の流れではないでしょうか。入管は、難民申請を繰り返す者が多くて困ると言いますが、不認定処分を受けた者をなかなか送還しようとしないわけですから、自らその原因を作っていると言えます。

 また一般市民も、国費による送還には批判的であり、たまにチャーター機で大人数の不法滞在者を送還したというニュースが流れると、税金の無駄遣いであると非難する声が上がるようです。しかし、これは、日本社会と周辺諸国との間に経済格差があり、国際社会に生きる私たちにとって、いわば「必要経費」ではないのでしょうか?

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