数字でみる 子どもの国籍と在留資格

                    奥田 安弘 著


明石書店
本体2,300円+税
ISBN:9784750316550
判型・ページ数:4-6・192ページ
出版年月日:2002/11/01


目次

凡例
プロローグ:アンケート調査の実施まで
1 アンデレ事件
2 婚外子の国籍
3 日本国際社会事業団との共同研究
4 調査の分析作業

ステップ1:現状の分析
1 子どもの国籍に関する回答
2 母親の状況
3 父親の状況
4 都道府県別・国籍別集計の修正
5 子どもの出生届
6 子どもの状況
7 国籍に関する諸手続

ステップ2:実践的解決
1 出生時の国籍認定
2 日本の役場への出生届
3 外国人登録
4 外国への出生届
5 新たな国籍取得
6 在留資格の取得

ステップ3:国際人権法上の問題点
1 子どもの権利条約
2 出生登録
3 無国籍の防止
4 婚外子の国籍
5 国籍留保制度
6 在留資格

エピローグ:アンケートの分析を終えて
1 児童相談所職員の声
2 苦労話を少しだけ
3 謝辞


エピローグ:アンケートの分析を終えて

1 児童相談所職員の声

 筆者がアンケートを集計していたら、ある児童相談所の職員は、約20通の回答のすべてに次のような意見を書いていた。

 「子どもの問題について、多くの人たちの関心が集まって誠に結構なことですが、マスコミ関係者や大学、その他の団体から、研究や調査と称して、様々な調査の依頼があり、業務に支障を来す事態も生じています。今、児童相談所の職員は日夜努力を強いられています。この調査が有意義に活用されることを念願いたします。」

 これと似た話は、日系ブラジル人などが人口の10パーセントを超えたことで有名になった群馬県大泉町でもあった。町を上げて日系人を受け入れるという態勢が話題を呼び、マスコミや大学の研究者などが押しかけたため、「研究者、マスコミ疲れ」になったというのである。日系人の労働者がボランティアで通訳をさせられたり、町の資料を貸したところ、返してもらえなかったという話もある 。
 児童相談所には、また別の悩みがあるだろう。現実に、子どもの国籍問題で困っているのに、誰も助けてくれず、調査の依頼ばかり来るのでは、嫌になるのも無理はない。そのような状況にもかかわらず、多数の児童相談所が本調査に回答を寄せて下さったのは、ISSJへの信頼だけでなく、この問題を解決してほしいという切実な想いがあったからに違いない。筆者は、そのような想いを感じながら、本調査の集計および分析に取り組んだ。

2 苦労話を少しだけ

 アンケートの集計は、コンピュータに入力すれば簡単に終わるとか、学生アルバイトを雇って人海戦術で行なったのだろうと思われるかもしれないが、現実には、筆者がひとりで研究室にこもり、コツコツと手作業で241 枚を集計した。
 回答者が子どもの国籍をどのように判断しているかという点だけでなく、筆者が子どもの国籍を認定するための手がかりとなる情報、とりわけ父母の状況を詳しく知りたかったので、1 枚1 枚を丹念に読みながら、その意味や問題点を考えた。
 そのため、同じアンケートを何度も読み返したり、枚数が合わないために、何度も数え直す、という非効率的なことをしてしまった。「このIT時代に何事だ」と思われるかもしれないが、法律問題はもともとコンピュータ処理に馴染まないのだから、仕方がない。また、筆者が仕事を他人まかせにできないという性分のせいもある。
 なお、昨年春、三菱財団へ中間報告書を提出するため、一度、アンケートをすべて集計したのであるが、その後、筆者が単独で分析結果を公表することになったので、アンケートの全項目をカバーすること、および現状の分析と法律的な問題点の指摘を分離することを目的として、集計をすべてやり直すことにした。
 作業は、昨年末から始めたが、他にも本の仕事(翻訳書と編著)があったり、月刊誌への連載や単発的な原稿依頼などもあったために、時間的に非常に苦しい想いをした。しかし、何とか4月中旬からの海外出張前に、執筆作業を終えることができた。校正は、7月中旬に筆者が帰国してから行なうことになっている。

3 謝辞

 最後に、本調査に回答を寄せて下さった児童相談所の皆さんに、心からお礼を申し上げる。皆さんの期待に応えることができたかどうかは分からないが、筆者としては、できる限り、実践的な解決方法を示したつもりである。また、本調査の回答のお陰で、国際人権法上の問題点を裏付けるための貴重な資料を収集することができた。この資料は、子どもの国籍取得権などを実現するために役立たせて頂きたいと考えている。
 さらに、本調査に誘って下さった鈴木博人先生、アンケートの実施や回収などの事務的なことをすべて処理して下さり、それにもかかわらず、筆者1 人の名前で本書を出版することに同意して下さったISSJの皆さん、とりわけ事務局長の大森邦子さん、常務理事の大槻弥栄子さんにお礼を申し上げる。
 また、いつもながら、筆者の企画を快く引き受けて下さり、いろいろ有益なアドバイスを下さった明石書店編集部長の黒田貴史さん、そして編集を担当して下さった加藤歩さんにもお礼を申し上げたい。

2002年3 月
奥田安弘