韓国国籍法の逐条解説

               奥田安弘/岡克彦/姜成賢


出版社:明石書店
ISBN:9784750340302
判型・ページ数:A5・224ページ
出版年月日:2014/06/30
価格:本体3,200円+税


はしがき

 少子高齢化や国際競争の激化に伴い、国籍を問わず、優秀な人材を確保したいと望むのは、いずれの国も同じである。わが国でも、高度人材の在留資格を優遇するための入管法改正案が、本年3月11日に国会に提出された。しかし、韓国は、単なる在留資格ではなく、将来に国益への寄与が期待される優秀能力者に対し特別帰化を認め、しかも複数国籍を容認するための改正国籍法を2011年から施行している。
 「新しい国籍を欲しいのであれば、古い国籍を捨てるのが当たり前」と思っている人がまだ多いであろう。しかし、時代の流れは急であり、そのような考え方は、今や修正を余儀なくされている。これは、韓国の国籍法を見習えと言っているのではない。ただ優秀な人材を確保するために、どのような方策が効果的であるのかを検討するにあたり、ひとつの参考例になることは否定できないであろう。
 奥田と岡は、韓国の全部改正国籍法が1998年から施行された翌年に、『在日のための韓国国籍法入門』を明石書店から出版した。この本は、実質的には、立法資料を丹念に渉猟した逐条解説であり、タイトルと内容が一致していない。この度、『韓国国籍法の逐条解説』を出版したのは、もちろんタイトルを改めるためだけではない。その後、数度の改正により、韓国国籍法は、大きな変貌を遂げた。
 そこで今回も、国会議事録だけではなく、法務部から公表された解説、施行令、施行規則、業務処理指針などの下位法令を丹念に読み込み、現行規定の解釈上の論点を明らかにするよう努めた(基準時点については、「凡例」参照)。改正作業中の議論や立法論を事細かに紹介することをやめ、解釈論に集中したのは、韓国国籍法の現実の運用を伝えたかったからである。また国籍の有無は、様々な権利義務の要件となるが(国籍条項)、本書では、あくまで国籍法自体の解釈に絞り、関連法令への言及は、必要最小限度に留めた。さらに「凡例」でも述べるように、韓国の法令などは、原文にもとづき、なるべく忠実に翻訳することを心がけたが、翻訳である以上は、韓国語に対応する日本語を機械的に当てはめるのではなく、日本の法律用語に対応するものがある場合は、これを訳語として用いた。
 前著は、奥田がまだ北海道大学在籍中に、当時は法学部の助手を務めていた岡に韓国語の資料を読んでもらい、共著として出版したものである。本書では、姜成賢に加わってもらい、新たに追加した資料の下訳を任せた。在日四世の彼は、韓国語を外国語として学習し、法科大学院修了後、司法試験から司法修習までの半年間、奥田の研究室に通って、資料をともに検討した。ただし、最終的には、岡のチェックを仰ぐ必要があった。奥田は、両名の読んだ資料をもとに、すべての原稿を書き下ろした(索引などを含む)。
 最後に、前著に引き続き、貴重な資料を提供してくださった李明宰さん(韓国・議政府地方検察庁検事長)、いつもながら奥田の著書の編集作業を務めてくださった小林洋幸さんに対し、この場を借りて、お礼を申し上げたい。

2014年3月

著者を代表して
奥田安弘


目次

はしがき
凡例

前注 韓国国籍法の制定と改正の歴史
 1.前史
 2.1997年改正
   女子差別撤廃条約の批准/認知による国籍取得/多様な後天的国籍取得/
   重国籍の防止/国籍の喪失
 3.その後の改正
   簡易帰化および特別帰化/重国籍防止の緩和/改正の特徴/重国籍者の地位/
   関連法令の改正


逐条解説

第1条 目的

第2条 出生による国籍取得
  生来的国籍取得/父母両系血統主義/婚内親子関係の成立/婚外親子関係の成立/
  子の出生前における父の死亡/補充的生地主義/棄児の出生地の推定
  【COMMENT】外国判決による韓国国籍の取得/婚外親子関係の事実主義/現在の子の常居所地法

第3条 認知による国籍取得
  1997年改正前との違い/韓国人父の認知/法務部長官への届出と年齢要件/
  届出の効力/届出手続
  【COMMENT】死後認知による国籍取得

第4条 帰化による国籍取得
  帰化の通則/申請手続/審査/帰化許可/朝鮮族の特例

第5条 一般帰化の要件
  帰化許可の基本要件/住所要件/能力要件/素行要件/生計要件/素養要件

第6条 簡易帰化の要件
  一般帰化との違い/血縁・地縁・養子縁組/法律上の親子関係と添付書類/朝鮮族の特例/
  韓国国民の配偶者/例外規定/婚姻生活の中断/未成年の子の養育/人道的配慮/
  法律上の婚姻の成立/配偶者帰化の添付書類/【COMMENT】外国の養子縁組裁判

第7条 特別帰化の要件
  一般帰化との違い/韓国国民の子/特別功労者/優秀能力者/添付書類/朝鮮族の特例

第8条 随伴取得
  妻の随伴取得の廃止/子の随伴取得の変更/随伴取得の要件と効力/申請手続

第9条 国籍回復による国籍取得
  帰化と国籍回復の異同/国籍回復の対象者/不許可事由/申請手続/審査/国籍回復許可/
  朝鮮族の特例

第10条 国籍取得者の外国国籍放棄義務
  後天的国籍取得/外国国籍放棄義務/外国国籍不行使誓約

第11条 国籍の再取得
  届出による国籍再取得/届出手続

第11条の2 複数国籍者の法的地位等
  複数国籍者の定義/複数国籍者の法的地位

第12条 複数国籍者の国籍選択義務
  国籍選択制度/国籍選択義務の対象者/基本的な国籍選択期間/兵役義務者の国籍選択/
  広義の遠征出産者

第13条 大韓民国の国籍選択手続
  韓国国籍の選択方法/兵役義務者の国籍選択届/狭義の遠征出産者/届出手続

第14条 大韓民国の国籍離脱要件及び手続
  届出による国籍離脱/届出手続

第14条の2 複数国籍者に対する国籍選択命令
  命令の対象者/命令の手続/命令の効力

第14条の3 大韓民国の国籍の喪失決定

第14条の4 複数国籍者に関する通報義務等

第15条 外国国籍の取得による国籍喪失
  後天的な外国国籍の取得/韓国国籍の留保届/外国国籍の取得日の推定

第16条 国籍喪失者の処理
  法務部長官による国籍喪失者の把握/届出義務の意義/届出および通報の手続

第17条 官報告示
  官報告示の意義/告示事項

第18条 国籍喪失者の権利変動
  国籍喪失者の権利の制限/国籍喪失前に取得した権利の処分

第19条 法定代理人の届出等
  【COMMENT】法定代理人の決定

第20条 国籍判定
  立法経緯および意義/国籍判定の対象者/国籍判定の手続

第21条 許可等の取消し

第22条 権限の委任

附則(1997年12月13日法律第5431号)
 第1条 施行期日
 第2条 帰化許可の申請等に関する経過措置
 第3条 国籍の回復及び再取得に関する経過措置
 第4条 国籍取得者の外国国籍放棄義務に関する経過措置
 第5条 二重国籍者の国籍選択の義務及び手続に関する経過措置
 第6条 国籍喪失者の処理及び権利変動に関する経過措置
 第7条 父母両系血統主義の採用による母系出生者の国籍取得の特例
   意義および対象者/韓国人母の子/法務部長官への届出/国籍取得の効力
附則(2001年12月19日法律第6523号)
附則(2004年1月20日法律第7075号)
附則(2005年5月24日法律第7499号)
附則(2007年5月17日法律第8435号)
附則(2008年3月14日法律第8892号)
附則(2010年5月4日法律第10275号)
 第1条 施行期日
 第2条 国籍選択の不履行による大韓民国の国籍の喪失等に関する特例
   改正前の国籍喪失者/韓国国籍喪失者の救済手続/外国国籍喪失者の救済手続
 第3条 外国国籍の放棄に関する適用例


補論 元祖韓国国民の認定とその範囲
 1.元祖国民とは
 2.日本の関連法令
   国籍立法/戸籍立法
 3.韓国の関連法令
   日韓併合による日本国籍の取得/戦後の立法
 4.1996年大法院判決
   事案の概要と判旨/国籍に関する臨時条例の効力/法律の施行範囲と適用範囲/国籍実務

資料
 1.国籍法
 2.国籍法施行令
 3.国籍法施行規則
 4.国籍業務処理指針
 5.外国国籍同胞の国籍回復等に関する業務処理指針
 6.家族関係の登録等に関する法律(抄)
 7.家族関係の登録等に関する規則(抄)
 8.国際私法(抄)


  参考文献一覧
  条文索引