amsartを使って論文を書く

このページでは、米国数学会(American Mathmatical Society)が開発したAMS-LaTeXを使用して論文を書くときの方法をまとめます。書き方には好みがあるので、書かれていることに間違いもあるかと思いますが気にしないでください。数学系の論文を書く際には、通常amsartと呼ばれるドキュメントクラスを使用します。

概略

まず論文を書くときの全体の構成を大ざっぱに示すと以下のようになります。

\documentclass{amsart}
% プリアンブル
\usepackage{amsmath,amsthm,amssymb}

\theoremstyle{plain}
\newtheorem{thm}{Theorem}

\theoremstyle{definition}
\newtheorem{dfn}{Definition}

\theoremstyle{remark}
\newtheorem{rem}{Remark}

\renewcommand{\theenumi}{{\roman{enumi}}}

\newcommand{\Real}{\mathbb{R}}
\newcommand{\Natural}{\mathbb{N}}

\DeclareMathOperator{\Co}{co}
\DeclareMathOperator{\Int}{int}
\DeclareMathOperator*{\argmin}{argmin}

\providecommand{\norm}[1]{\left\lVert#1\right\rVert}
\providecommand{\abs}[1]{\left\lvert#1\right\rvert}
\newcommand{\ip}[2]{\left\langle #1, #2 \right\rangle}

\begin{document}
% 本文
\title[書き方]{amsartを使って論文を書く方法}
\author[S. Iemoto]{Shigeru Iemoto}
\address[S. Iemoto]{Department of Math ematical and Computing Sciences, Tokyo Institute of Technology, Oh\-oka\-yama, Me\-guro\-ku, Tokyo 152-8552, Japan}
\email{Shigeru.Iemoto@is.titech.ac.jp}
\keywords{amsart.}
\subjclass[2000]{??}

\maketitle

\begin{abstract}
...
\end{abstract}

% 以下、論文の内容

...

\begin{thm}
...
\end{thm}

...

\begin{thebibliography}{99}

% 参考文献

\end{thebibliography}
\end{document}

  • プリアンブル:TeXは基本的にはドキュメントクラス(ここではamsart)と呼ばれる文書の体裁どを細かく定義したファイルに則して版組をしていきます。使用するドキュメントクラスの設定に対して自分なりの設定を書き込むのがプリアンブルの部分です。
  • 本文:説明の必要はないと思いますが、ここに本文を書きます。
  • 参考文献:ここに参考文献を書きます。{99}の部分は参考文献の番号付けをする際に2文字分の幅を確保するという意味での命令であり、中の数字には特に意味はなく"00"とか"12"でも別に構いません。参考文献が一桁のときには、{99}の代わりに{9}などと書きます。

それでは、上で使っている命令について細かくみていきましょう。

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プリアンブル

\usepackage{amsmath,amsthm,amssymb}

\theoremstyle{plain}
\newtheorem{thm}{Theorem}

\theoremstyle{definition}
\newtheorem{dfn}{Definition}

\theoremstyle{remark}
\newtheorem{rem}{Remark}

  • \usepackage{amsmath,amsthm,amssymb}: 追加のパッケージを読み込むときの命令です。amsartを使って論文を書く際には、最低限これだけの指定が必要です。

\theoremstyleは以降の\newtheoremで定義される環境の体裁を決めるものです。スタイルにはplain, definition, remarkがあります。普通は、

  • plain:Theorem, Lemma, Corollary, Proposition, Conjecture, Criterion, Algorithm
  • definition:Definition, Condition, Problem, Example
  • remark:Remark, Note, Notation, Claim, Summary, Acknowkedgement, Case, Conclusion

で指定するようです。

\renewcommand{\theenumi}{{\roman{enumi}}}

  • \renewcommand: すでにある命令に対して、自分好みの設定に書き加える命令です。

amsartではenumerate環境を使うとき、デフォルトでは第1レベルの番号付けが(1), (2), ... となります。しかし数式番号のデフォルトの体裁も(1), (2), ...となるため、混乱をさけるために第1レベルの番号付けを(i), (ii), ... という表示に変えています。

\newcommand{\Real}{\mathbb{R}}
\newcommand{\Natural}{\mathbb{N}}

\DeclareMathOperator{\Co}{co}
\DeclareMathOperator{\Int}{int}
\DeclareMathOperator*{\argmin}{argmin}

\providecommand{\norm}[1]{\left\lVert#1\right\rVert}
\providecommand{\abs}[1]{\left\lvert#1\right\rvert}
\newcommand{\ip}[2]{\left\langle #1, #2 \right\rangle}

  • \newcommand: 存在していない命令に対して、新しく定義する命令です。論文を書く際に、この命令を多用するべきではありません。
  • \DeclareMathOperator: 数式中のサイン(sin)や対数(log)のように、変数ではなくoperatorとして表示させたい場合に使う命令です。奥村先生の本では、このようなものを\log型と呼んでいます。ここでは、内点(interior)と凸包(convex hull)、argminを定義しています。argminでは極限と同様に別行立ての数式のときには下(上)付き文字にしたいので\DeclareMathOperator*とします。
  • \providecommand: もし古い定義があればそれを優先する命令です。

以上が私がプリアンブルに書いてある大体の内容で、論文を書くたびにこれを書くのは面倒なので"/usr/local/teTeX/share/texmf-local/tex/latex/"の下に"misc"というフォルダを作成して、"mymacros.sty"に書き込んで保存して読み込むようにしています。

ちなみに単体のスタイルファイルを置くときには、通常"misc"の下(無ければ作る)に入れておきます。この場合、プリアンブルに

  • "\usepackage{mymacros}"を書くこと
  • mymacros.styを書き換えたときに、root権限で"mktexlsr"コマンドを実行する

のを忘れないようにしてください。

そして、実際に投稿する段階に入ったらこのマクロを直接書き加えるようにしてます。(結局、労力は同じかもしれませんが。。。)

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本文

それでは、本文に最低限書くことについてまとめます。以降は\begin{document}より下に書きます。

\title[書き方]{amsartを使って論文を書く方法}
\author[S. Iemoto]{Shigeru Iemoto}
\address[S. Iemoto]{Department of Math ematical and Computing Sciences, Tokyo Institute of Technology, Oh\-oka\-yama, Me\-guro\-ku, Tokyo 152-8552, Japan}
\email{Shigeru.Iemoto@is.titech.ac.jp}

\keywords{amsart.}
\subjclass[2000]{??}

\maketitle

論文のタイトルや著者に関する情報を書いている部分です。この部分を書くのは\maketitleの前であればどこでもよいという指定があるので、私は本文、つまり\begin{document}以降に書くようにしています。共著の場合は同様にして共著者の情報を書き加えれば、自動的に"and"等を付けて表示してくれます。

  • \title{}[]: 論文の表題を記述します。{}がトップに表示されるもので、[]は柱部分(ページの上部)の奇数ページに表示されます。
  • \author[]{}: 著者を記述します。{}にフルネーム、[]には略記したもの(共著の場合のラベル付けの意味もあります)を書きましょう。[]で書いたものは柱部分の偶数ページに表示されます。
  • \address[]{}: 住所を書きます。[]には\authorと同じものを書きます。
  • \email{}: e-mailアドレスを書く部分です。
  • \keywords{}: 論文のキーワードを書きます。複数指定する場合には","で区切り、最後には"."を付けます。
  • \subjclass[2000]{}: 論文の分類を書きます。分類についてはMSC2000のページを参考にしてください。\subjclassのオプションには、revisionの2000を書きます。

ここまで書いたら、最後に"\maketitle"を書きます。

\begin{abstract}
...
\end{abstract}

\maketitleの直後に論文の要約を記述することができます。\maketitleの前に書くという流儀もあるようなのですが、どちらが正しいのでしょう?あまり使うことはないかもしれませんが、論文の表題と著者、要約だけを1ページに表示したい場合には、最初の行を
\documentclass[titlepage]{amsart}
と"titlepage"を挿入します。

\begin{thm}
...
\end{thm}

TheoremやLemma等を書くときには、\begin{...}\end{...}で記述します。定理や補題を引用する際に、補助情報を付け加えたい場合には\begin{thm}[補助情報]...\end{thm}のように[...]を使います。

\begin{proof}
...
\end{proof}

証明を書くときにはproof環境を使います。証明終了の記号は自動的に出ます。デフォルトではProof.と表示されるのですが、日本語での論文を書く際に別のものに変更したい場合にはプリアンブルに
\renewcommand{\proofname}{\textbf{証明}.}
などと書いておきます。
あまり使うことはないかもしれませんが証明終了の記号を変更したい場合には、
\renewcommand{\qedsymbol}{...}
をプリアンブルに書くことで変更することができます。

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参考文献

  • 奥村 晴彦 『LaTeX 2e 美文書作成入門 改定第4版』 技術評論社, 2007.
  • American Mathematical Society, "User's guide for the amsmath package (Version 2.20)", American Mathematical Society, 2004.
  • American Mathematical Society, "Using the amsthm Package (Version 2.20)", American Mathematical Society, 2004.

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