ホーム > 学生之声 > 旧「学生之声」目次 > 影評・劇評・書評・随想 【'06東京国際映画祭レポート/05年度学士入学生・山崎寿江さん】  
 10月21日から29日まで渋谷と六本木で第19回東京国際映画祭が開催されました。

映画祭では、東京に世界から数多くの映画が集まり、コンペティション部門ではグランプリを目指して競い合います。近年はアジア映画だけの枠、「アジアの風」部門も作られ、中国、台湾以外にもマレーシア、シンガポールなど普段は観ることがあまりできない映画が上映されます。映画祭は最新作が観られるだけでなく、舞台挨拶やティーチインで監督や出演者から裏話が聞けたり、質問ができるのが魅力です。街には映画祭を見る人々でにぎわいます。映画好きな私にとって心躍る10日間で、近年は毎年参加しています。

 今回、まず観た作品はコンペティション部門の『十三の桐』です。この映画はめでたく審査員特別賞を受賞しました。ボーイッシュで明るい活発な女の子の主人公を中心とする四川の高校生たちのみずみずしい爽やかな、しかし少し痛い青春の日々を描いた作品です。主人公以外の登場人物たちも生き生きとしていて、内容もとても面白く、バランスの取れた良い作品でした。映像の編集も凝っていて画像も楽しめました。ただ、ティーチインがなかったのが残念でした。
9月末に上映作品の発表があります

同じくコンペティション部門の『考試』は農村の小学校で子どもたちが統一試験を受ける話です。こちらは惜しくも賞を取ることはありませんでしたが、先生と生徒たちの心温まる良い映画でした。事実を元に脚本を書き、本人に再現してもらったドキュメンタリー方式の劇映画というのが特徴です。農村は暖色系のライト、都市は青みのある色のライトを使って映像にコントラストをつけたと監督がティーチインで話していたように、農村が暖かく描かれていました。

 
『おばさんのポストモダン生活』は、大人気で前売り券はすでに完売していましたが、六本木ヒルズ会場では当日0時からインターネットで当日券が買えるので、(便利になったものです)私もネットを使って購入してなんとか観ることができました。この作品は、香港ニューウェイブの巨匠のアン・ホイ(許鞍華)が監督した、定年退職したおばさんが上海で「ポストモダン」な生活を送るドタバタコメディです。ただ笑えるだけでなくしんみりするシーンは映画『女人、四十。』を思い出しました。主人公のおばさん役は『駱駝祥子』や『香魂女』等で有名なスーチン・ガオワー(斯琴高娃)で、彼女の「おばさん」ぶりが見ものです。他にもチョウ・ユンファ(周潤發)、ヴィッキー・チャオ(趙薇)など共演者もとても豪華です。音楽は久石譲。原作の小説は近日、研究室に入荷するらしいのでお楽しみに!

香港コメディの『I’ll call you』は周星馳の『少林サッカー』『カンフーハッスル』に出演の香港の俳優、ラム・ジーチョン(林子聰)の初監督作品。この作品は、アンディ・ラウ(劉徳華)が出資していることもあり、アンディ自身も登場するのがみどころのひとつ。また、監督が日本の演歌が大好きなために演歌歌手が登場して歌うシーンがあります(笑)。都会人の乾いた心や告白したくてもできない思いを描いた、でもちょっと不思議なラブコメディです。

 『青春期』は中国、北京を舞台にした2人の女の子が主役のラブストーリーです。『十三の桐』とはまた異なる感じのみずみずしい青春が描かれています。今の日本や韓国の映画に近い印象を受けました。ティーチインは主演女優の田原(ティエン・ユアン)、監督、プロデューサー、脚本家のみなさんが登場しました。夜遅い回でしたが、たくさんの人々が観に来ていました。

「アジアの風」部門の最優秀作品に贈られる「最優秀アジア映画賞」と最優秀芸術貢の両賞をみごと受賞した『父子』は、パトリック・タム(譚家明)監督の17年ぶりの作品です。もともとタム監督が映画学校で教えていた時に生徒と一緒に企画した作品で、ベテランの監督による、よく練られた味わい深い濃厚な映画でした。父親役のアーロン・コック(郭富城)、がアイドル時代から一皮向けた演技を披露し、子役の子の演技もとてもよかったです。そして、舞台挨拶で見た母親役の女優、チャーリー・ヤン(楊采ジ)はため息が出るほどの超美人!(※女偏に尼)


こんなラッキーなことも

最後に観た『不完全恋人』は、北京を舞台にしたさわやかラブストーリです。「青春期」とはまた趣の異なる北京の姿が見られておもしろかったです。上映後はDJ・チャン監督、主演のシー・クー(史可)と阿部力、映画の音楽も手がけるほかに、監督役としても出演しているジェフ・チャン(張信哲)が勢ぞろいしてのとても華やかなティーチインが行われました。シー・クーはもちろん、かっこいい阿部力とジェフ・チャンに目が釘づけでした(笑)。通訳は字幕翻訳でおなじみの水野衛子さんでした。

これらの作品のほかに、恵比寿で行われたアジア新鋭監督特集で『裁判官宋魚水』を観ました。


 東京国際映画祭は毎年大変多くの映画を上映するので、観たい作品がありすぎて毎年、どれを観ようかとても迷います。今回は中国、香港に固まってしまいましたが、マレーシアやシンガポールなどのほかのアジアの国々の映画も次は観てみたいです。

映画祭は日本語、英語字幕のほかにも中国語の字幕も付くことがあるので、見ているだけで勉強になります。ティーチインでは監督や俳優の話す生の中国語も聞けるので、日ごろ勉強した中国語を試せるいい機会でもあります。また、語学だけでなく、映画を観ることで中国の文化を理解するのにも役立ちます。同じ中国を撮った映画でも、映画の数だけ異なる中国を見ることができるところが面白いです。


東京国際の次は…

 映画祭は楽しい上に勉強もできて一挙両得です。東京国際映画祭以外にも秋には多くの映画祭が開催されます。映画好きの人もそうでない人も一度は行ってみることをおすすめします。家でDVDを観るのもいいけれど、たまには映画際に足を運んで映画館で観るのも楽しいですよ。

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