ホーム > 学生之声 > 旧「学生之声」目次 > 元・学生之声 【国際学会体験記/中国言語文化専攻教員・榎本泰子先生】    
 9月21日から24日まで、上海で開かれた学会に参加しました。

私がはじめに参加したのは「第二回世界中国学論壇(The Second World Forum on China Studies)」で、国内外の学者400人余りを招待して行われた大規模な学会でした。上海社会科学院の主催で隔年で開かれ、「中国学」という名称からもわかるように、中国に関連するあらゆる分野を対象としています。その規模の大きさ(すなわち中国側が費やした資金の大きさ)は、この学会が学問の場における中国の「国威発揚」の意味合いを持っていることを感じさせます。つまり、世界の学者を一堂に集め、中国研究の重要性(=21世紀における中国のプレゼンスの大きさ)を互いに確認しようというのでしょう。開会式で上海市政府や中国共産党上海市委員会のお偉方が、「中華文明の復興」などと題して次々に祝辞を述べたところからも、そのような側面が裏付けられます。

 けれどもこうした国際学会に参加するのが初めての私にとっては、中国側のねらいはさておき、欧米や韓国、インド、ベトナムなどの研究者と、お国なまりのある中国語で交流するのは楽しいことでした。これまで本を通じて名前だけは知っていた有名な研究者と名刺交換した時はドキドキしました。(学者は会社員と違い、名刺交換をする機会が少ないので、そのタイミングや手の出し方などに気を遣うものです。)また特に、漢字文化圏ではない欧米の研究者が、流暢に中国語を話すことには本当に感心させられました。ケビン・コスナー似のアメリカ人研究者とお近づきになったことは、今回の一番楽しい思い出です。



上海展覧中心のメインホール。
開会式の時にはこの広い会場が
いっぱいになった。


 学会は18もの分科会に分かれ、主催者である上海社会科学院の各研究所や、北京大学、復旦大学など国内主要大学の研究所などが各分科会の運営を担当していました。私は上海社会科学院歴史研究所が運営する分科会「中国都市史」に参加したのですが、これは同時に歴史研究所の「創立50周年記念国際学術討論会」を兼ねており、「世界中国学論壇」の日程が21・22日で終了したあとも、場所を変えて引き続き討論会が行われるという複雑な構造を取っていました。


マスコミも多くつめかけた開会式。
手前は北京大学などの有名教授たち。


大勢の学生ボランティア(紺のTシャツ)に
支えられた学会事務局。

 こうした「二重構造」のおかげで、参加者の間にはさまざまな混乱が引き起こされました。例えば、海外からの参加者も含めて、自分が何日の何時に発表するのか前もってわかっていた人は誰もいませんでした(笑)。私の場合も、驚くべきことに帰国予定の24日に発表が組んであることが判明し、あわてて23日に変更してもらう有様でした。日程変更などの事務的なアナウンスはほとんど行き届かず、学会終了後のお楽しみである雑技の見学も、送迎バスの発着時間が変わったことを知らずに置いてきぼりを食いました。総じて学会の運営はよくいえばおおらか、悪くいえばルーズであり、日本からのある参加者も「ホテルに着いてみたら自分の部屋が確保されていなかった」と憮然とした表情でした。



延安飯店の部屋。
品のいい中国風インテリア。

 ちなみに、招待されて研究発表をする人はホテル代・食事代は主催者持ちとなっていました。(メイン会場で基調講演をしたりする有名な研究者は、往復の旅費も支給されているはずです。)私が泊まったホテルは上海展覧中心にほど近い延安飯店でした。普通日本人観光客は泊まらない所ですが、今年リニューアルを終えたばかりで「四つ星」に申請中とのこと。部屋の設備や食事などに不満はありませんでしたが、目の前を幹線道路と高架路が走っているために車の騒音がすさまじく(特に渋滞の時、中国の道路はクラクション鳴らし放題になる)、夜は耳栓なしでは寝られませんでした。
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