ホーム > 学生之声 > 旧「学生之声」目次 > イベント報告 【小坂史子さん講演:中華電影の現場から〜女性プロデューサー奮闘記〜/報告者:中国言語文化専攻教員・榎本泰子先生】

会場は人でいっぱいでした


 去る6月4日に開かれた講演会「中華電影の現場から〜女性プロデューサー奮闘記」では、中国語圏映画のプロデューサー・字幕翻訳家として活躍されている小坂史子さんにお話をうかがいました。当日は中国言語文化専攻の学生を中心に、他学部・他専攻の学生や学外からの来場者も多く、150人教室がいっぱいになりました。
 

 小坂さんは約20年前、雑誌のライターとして台湾の侯孝賢監督を取材した時、「キミ僕の仕事を手伝ってくれない?」と頼まれ、映画の世界に足を踏み入れたといいます。もともと中国語を専門に学んだわけではなく、正に現場でもまれながら言葉を身につけていったとのこと。侯孝賢作品の字幕をいくつも手がけられているのをはじめ、最近では日本マンガの映画化として話題になった『墨攻』の字幕翻訳・アソシエイトプロデューサーも務められました。


 前日に台北から戻ったばかりという小坂さんは、軽やかなTシャツ姿で、壇上に上がるや「じゃ、何から行きましょう? 何でも質問してください!」とパワー全開。お話はプロデューサーの仕事の内容から字幕翻訳の苦労、ロケで訪れた貧しい農村での体験にまで及び、その圧倒的な実体験の重みに、聴衆は息をのんで聞き入りました。

 「私は自分のことを映画人だとは思っていない」と言う小坂さんは、アンディ・ラウ、アン・ソンギら華流、韓流のスターたちのことを、まるで隣のおじさんのようにさらりと語ってくれました。そればかりか「みやざわさん」(宮沢りえ)、「おだぎりさん」(オダギリジョー)などの名前もごく自然に口にされ、会場にはどよめきが広がりました。ミーハー的な興味からスターの裏話などを期待していた人(私を含む)にとって、小坂さんが有名俳優たちを映画製作の仲間として、同じ目線で見ていることは大きな衝撃でした。

 今日の映画界は人も資金も国境を越え、特に巨大市場としての中国にそれらが集中しつ
つあると言います。中国語を武器として、世界を相手に奮闘する小坂さんから聞くその話
は、どんなマスコミを通じて聞くより説得力がありました。

貴重な映像も披露してくださいました
 

後半は小坂さんから会場に質問が
 当日のアンケートには多くの来場者から回答があり、中国語圏映画にまだあまり馴染みのない1年生にとっても、この講演が大きなインパクトを与えたことがよくわかりました。

 以下その一部を紹介して、当日の感激と興奮を伝えたいと思います。

<映画について>


◎「翻訳家にとって映画は監督からあずかったものなので、監督が最も残したいと考える言葉を尊重して残しています」という言葉には深く感銘を受けました。

◎……あくまでも監督の考えている主旨から逸れないように、訳し方を考えたり、また監督が撮影ミスをした時も、何も責めたり(?)せず、「人間はミスも犯す。完璧ではない」ということから、ちゃんと字幕でフォローするという小坂さんに対し、本当に感動しました。このように皆が協力して、お互いのミスを自分たちがもっている能力を生かして補っていくことで素晴らしい映画を製作していけるんだ、ということを知ることができました。

◎私はこの講演の前に氏の映画を何本か見たのですが、聞いた後に「ああ、あのシーンにはこんな苦労があったんだ」と妙に納得しました。特にサンプルで見た『長江哀歌』の一シーンや、プライベートムービーの解説の時のいわゆる「ここだけの話」の中には、テレビやラジオでは語られない実状がありありと伝わり、非常に参考になりました。


<言葉について>


◎「中国語を完璧に操れるようになるのを待ってから中国に行くのでは遅い。現地で仕事をしながら学んでいくのがベストだ」という小坂さんのことばには非常に説得力があり、なるほど、と思いました。

◎やはり海外で学ぶには、日本語が大切なんだと考えさせられた。日本語のニュアンスをどう伝えるかがキーポイントになるのに、あいまいな日本語ではトラブルの原因であるのだ。

◎言語を学び、使えるようになることによって世界は広がるけれど、結局言葉は道具でしかなく、そのことで何がしたいのか、どうしたいのかという、その先の目的や目標が大切だということも感じました。そして逆にその目的や目標があることによって諦めずに勉強することができるんだと思います。


小坂さんが手掛けた作品の数々

<現代の中国>

◎中国の農村部では治安が悪いということも学んだ。その理由の一つに、やはり現代の中国の問題となっている貧富の格差が挙げられ、その深刻さを改めて思い知らされた。世界で今最も経済力がついているのも中国。明日生活することもままならない人がいるのも中国。この問題と事実を他国のことと割り切らずに国際的な問題として受け止めていかなければならないと痛感した。

◎話の中に、中国では人口が多いだけに努力しても上にはい上がるのは大変だというのがありましたが、今、いろいろな分野で有名になっている中国人の方々は考えられないほどの努力をし、強い精神力を持ち合わせているんだと感心したと同時に、自分も見習わなければならないという思いでいっぱいになりました。


<人として……>

◎小坂さんの一緒に仕事をしたい人という項目で挙げていたことも特に印象に残ってます。基本的なことばかりだけれど、どれも大切なことだと思いました。「自らコミュニケーションしようとすること」「相手のことを考えられること」はもちろん、「わからないことを『わからない』と言えること」の大切さは、仕事だけでなくいろいろな場面で必要であると言えると思います。当たり前なことを当たり前にするというのは簡単なことのようでいて難しいのですが、私はそのような人になりたいと、改めて思いました。

◎この講演で、やる気が一番必要なんだと思うようになった。

◎小坂さんは「侯孝賢(監督)に会っていなかったら映画の道には進んでいなかった。それほど魅力のある人だった」と言っていたが、私にとっても小坂さんは魅力のある人だった。


 (2007年6月4日開催)




小坂さんが携わった映画の最新作を観てみたいと思った人は ----------------> コチラ(『長江哀歌』公式サイトへ)



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