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ホーム > 学生之声 > 【イベント報告】呉文光氏講演会「未来の記憶のために part2」(14年9月29日開催)

呉文光監督(右)と中山大樹さん(左)

2014年9月29日、「未来の記憶のために part2」と題する講演会を開催しました。講師はドキュメンタリー映画監督の呉文光さんで、2010年11月以来4年ぶりの登場でした。通訳と解説を務めてくださったのは中国インディペンデント映画祭代表の中山大樹さんで、こちらも2011年11月の講演会に続く登場でした。4年前に呉文光さんが始めた「メモリープロジェクト(民間記憶計画)」は、若者にカメラを持たせて故郷の村に帰し、50年前の大飢饉の記憶を村の老人に語ってもらい撮影するというものでした。こうした働きかけは、今日までに村人たちの意識を大きく変え、タブーとされてきた大飢饉の記憶をよみがえらせ、犠牲者を悼む記念碑を建てるなどの行動に発展しています。講演はプロジェクト参加者であり若い世代を代表する章夢奇さんの証言もまじえながら進められました。芸術を社会と連動するものととらえ、真実を記録することをめざす呉文光さんたちの姿勢に、多くの来場者が感銘を受けました。

犠牲者の名前と生没年が刻まれた記念碑

以下、当日のアンケートから学生の声を紹介します。

昨年の秋山珠子先生の「中国文化概論」の授業の中でもこのプロジェクトの作品を実際に見せていただいたので、今回の講演会では呉文光監督の活動について理解しやすかった。農村で人々に飢餓についてインタビューした後に、飢餓の犠牲者のための碑を作るという活動は、政府にとって飢餓の事実は不都合なものであるから、あえてその問題を扱うことはとても勇気が必要だと思う。講演の中で、飢餓について政府の目を気にして話すことをためらう人がいたという話に表れていた。昨年の授業で見た作品の中でも、飢餓についてドキュメンタリーを撮ることに村人が集まって撮っていいかどうかを議論している場面があった。(中略)それぞれの場所の郷土史や社会問題であってもあまり知られていないことに光を当てていくというのは、ただ問題を広く知らしめるだけではなく、その場所の文化や伝統にも関係のあることで、その場所について改めて見つめ直す機会でもあると思った。また若い人々が参加して、インタビューなどを通じて村人とコミュニケーションをとることで、その地域の活性化につながる活動だと思った。(専攻3年生女子)

章夢奇さんによるプロジェクトの紹介

「芸術が社会にどう貢献していくか」「芸術で終わらない」という呉文光さんの言葉がとても印象的だった。自分の思い込みかもしれないが、現代社会において芸術(音楽・映画など)は、お金を稼ぐという目的を実現させるために行われる商業的な活動であり、社会に貢献しようという意識で行われているわけではないように感じる。そのような状況の中で、きちんと芸術についてのあり方を考え、作品に深い意味を持たせるのは、娯楽として撮影された作品の何倍もの価値があるように思う。(中略)対象が農民だという事に気づいた時、ようやくこのプロジェクトを理解することができた。農民は教養がなく自分では伝えていくことが難しいから、監督たちがわざわざ村まで出向いて映像を撮りに行くのだと、しっかりと考えられていて、歴史の発掘をするという自身の言葉に見合う活動をしているのだと思った。(専攻3年生男子)

今回のような講演会は、中国人の方がもっと聴くべきだと思ったのですが、それを中国言語文化専攻で日本人の私が聴くことによって、何をするべきか、何ができるのかなど、非常に考えさせられました。呉文光監督の活動はとてもすばらしく勇敢で、自分ができることはとても些細なことなのではないか、それすらもできないのではないかと思ってしまうほどでした。まず、メモリープロジェクトのように、自分のことや日本のことを知ることから始まるのではないかと思えました。(専攻3年生女子)

当日の会場風景

高校時代の歴史の最後の授業で、私の歴史の先生はこう言いました。「三年間、私が教えたものはあなたたちの大学入学試験のためだけです。真実は、あなたたちが自分で探してください。」今でも覚えています。(文学部中国人留学生)

参考リンク: 呉文光氏講演会「未来の記憶のために~中国ドキュメンタリー映画の可能性」(10年11月30日開催)

参考リンク: 中山大樹氏講演会「中国独立電影(インディペンデント映画)に魅せられて」(11年11月21日開催)

参考リンク(外部): 呉文光&章梦奇 東京イベント同行記 (中国インディペンデント映画祭)