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ホーム > 学生之声 > 【イベント報告】森岡葉氏講演会「北京の30年 ~ 文革からオリンピックまで」(08年12月8日開催)/報告者:中国言語文化専攻教員・榎本泰子先生

 2008年12月8日午後16時35分より、3455教室においてフリーライター森岡葉さんの講演会「北京の30年~文革からオリンピックまで」が行われました。森岡さんは音楽雑誌『ショパン』などに寄稿するライターで、ピアニストを中心に、世界の著名な音楽家を取材しています。こう聞くと、多くの人は「中国と一体何の関係があるのだろう」と思うかもしれません。実は森岡さんは大学生の時に、文化大革命さなかの中国に留学するという貴重な体験を持っています。講演会ではドキュメンタリー映像や、当時森岡さんが自ら撮影した写真を映し出しながら、文革中の人々の暮らしが紹介されました。

 新聞記者だった父親の赴任にともなって1974年秋に北京の土を踏んだ森岡さんは、当初中国に関する知識は何もありませんでした。在籍した北京語言学院(現在の北京語言大学)では、中国の友好国とされたアフリカやアジアの学生、左翼的な思想を持ったカナダやフランスの学生と共に学びながら、「自力更生」を説く毛沢東の思想に触れ、「こういう考え方もあるんだ」という驚きと発見を繰り返しました。農作業や工場見学などにも参加し、「(中国が)日本とは違う近代化の道を探っているんだ」という感動を覚えたといいます。

 帰国後、森岡さんは日本の大学を卒業して日中経済協会に勤めましたが、出産や子育ての間、長く中国とは離れていました。近年になって文革で両親を失ったピアニスト、フー・ツォン(傅聡)と出会い、取材を重ねるうちに、かつて過ごした中国での日々がよみがえったといいます。それからの森岡さんは、初の著書『望郷のマズルカ~激動の中国現代史を生きたピアニスト フー・ツォン』を出版し、ユンディ・リやラン・ランといった中国の若手ピアニストにインタビューするなど、活躍を続けています。中国語の力に、大好きなピアノを結びつけたことが、森岡さんの個性であり、ライターの世界での評価につながったことがわかります。「みなさんもただ中国語を学ぶのではなく、何か一つ、好きなことと結び付けてください。それでこそ長続きしますよ」。講演会の最後に、森岡さんは明るくしめくくってくださいました。

以下、当日のアンケートから学生の声を紹介します。

著書を片手にお話しされる森岡葉氏

 今回私は森岡さんのお話を聞いて、文革に対して抱いていたイメージが少し変わりました。文革というと、閉鎖的で暗いイメージがあり、文革の体験談を聞くのは最初は気の進むものではなかったのですが、実は中国国内でも当時外国人が留学をしに来ていたこと、また彼らが丁重に扱われたこと、文革の目的の中に「三大差別撤廃」というものがあって、格差を是正しようとしたことなど、私の知らない文革の新しい一面が垣間見え、文革がただ悪かったことではないと知り、気がついたら森岡さんのお話に引きこまれていました。もしかしたらそれは森岡さんがとても明るい方で、とても聞きやすい話し方をされたからかも知れません。(専攻1年女子)

 「百聞は一見に如かず」という諺があるが、やはり「一見」、すなわち「経験」をしてきた人の言葉には重みがある。私たち青年は専ら読書によって歴史を学ぶ。しかし、これは「百聞」でしかなく、どう頑張っても「一見」することはできない。そのような中で、今日のように経験者の言を拝聴する機会に恵まれている私たちは、書物から学ぶことのできない生の記録を学んでいく必要があるだろう。(専攻1年男子)

 講演会の中で印象に残っていたことがあります。それは森岡さんが、中国語を学ぶ事において何でもいいから自分の趣味とつなげること、と言っていたことです。何でも初めて手をつけるものに対しては、不慣れ感や、自信がもてなかったり、続かなかったりして諦めてしまうことが多いと思います。でも、自分の趣味とつなげることで、少しでも苦痛などを感じなくなるものなのだなと、森岡さんを見ていて思いました。とても良いことが聞けたと思いました。まだ大きくはないですが、今回の講演を聞いて、少しでも自分の「これから」についての糧になったと思います。(専攻1年女子)

講演会風景

 文革を経験したピアニストの人生は波乱だった。腕を折られてピアノが弾けなくなったり、コンクールで賞を取らなくてはならないというプレッシャーに戦って勝ったと思ったら、楽器の批判が始まってしまったりで、時代の流れに振り回された。一度心に負った傷はなかなか癒えない。言葉にできないような悲しく切ない気持ちをピアノの音色にのせているような気がした。 (専攻1年女子)

 僕はピアノを16年間やっていて、ユンディ・リやラン・ランなどのピアニストはあこがれである。そんな大物アーティストたちとも関わりの深い森岡さんの話は興味深く、うらやましいとも思った。中国語と何かを結びつけて勉強する。これは確かに必要なことだと共感できた。(専攻1年男子)