ニホンウナギの保全と持続的利用のための11の提言

ニホンウナギの保全と持続的利用を実現するために取り組むべき事柄として、以下の11項目を提言する。

2016年7月7日
中央大学 法学部・研究開発機構ウナギ保全研究ユニット
海部 健三

提言1:ニホンウナギの管理責任分担の明確化
ニホンウナギについては、国が責任を持って保全と持続的利用を推進するシステムを構築する必要がある。ただし、全国の河川や沿岸域に成育場が分散していることから、個体群動態など現状の解析と管理計画の立案、国家間・都道府県間の調整は国が行い、現場レベルの管理については都道府県行政が計画を立案し施行するといったように、適切に責任を分担する。

提言2:個体群サイズ動態の把握
適切に個体群管理を進めるためには、現状の把握が欠かせない。しかし、現在入手可能なデータでは、個体群サイズの動態を推測することは難しい。個体群サイズの動態を把握するため、適切な指標を設定し、データを収集するためのモニタリングシステムを早期に構築する必要がある。モニタリングの手法としては、漁業日誌の普及など漁業に関する情報収集制度の整備とともに、漁業に頼らない科学的なモニタリングを併用することが重要である。

提言3:シラスウナギ漁獲量を削減する実効力のある規制
減少している生き物を持続的に利用するのであれば、現状よりも消費を削減すべきである。現行の池入れ量制限において、科学的な個体群サイズ動態の指標に基づいた上限量の設定方法を議論する必要がある。少なくとも、何年後にどのような決定方法に移行するのか、そのロードマップを明確にすべきである。

提言4:池入れ量制限における人工種苗の取り扱いに関する議論の開始
人工種苗の商業利用が天然シラスウナギ漁獲量の削減に結びつくように、現行の池入れ量制限に人工種苗を含める必要がある。あわせて、人工種苗についてはその50%を池入れ量として計算するなど、人工種苗の利用を促すシステムの構築が望まれる。

提言5:黄ウナギ禁漁区の設定
将来の親魚となる黄ウナギの漁獲量も削減すべきである。アウトプットコントロール(漁獲量制限)の困難な黄ウナギの漁業管理については、禁漁区の設定が有効と考えられる。

提言6:銀ウナギの禁漁
産卵回遊に向かおうとする銀ウナギを保護するため、降河回遊時期にあたる10月から1月のウナギの漁獲を、全国一律で禁止すべきである。一個体の雌のニホンウナギは、100万個から300万個の卵を産むため、雌雄の銀ウナギを一組守ることで、100万規模の次世代のウナギを生み出すことにつながる可能性がある。

提言7:新しいシラスウナギ流通管理システムの構築
密漁・無報告漁獲・密輸を促進している可能性の高い、シラスウナギの県外への販売制限、および日本と台湾の間の取引制限を撤廃し、流通の過程を追跡できる、新しい流通管理システムを構築する必要がある。

提言8:放流から移送への転換
養殖場から購入された個体の放流と比較してリスクが低く、個体群回復の効果が期待できる放流の手法として、河川横断工作物の上流への移送(汲み上げ放流)、および、シラスウナギの進入が減少した地域への移送を検討すべきである。なかでも河川横断工作物の上流への移送は、現時点で得られている知見からも、十分に推奨できる。

提言9:河川横断工作物による遡上の阻害の解消
河川横断工作物の上流の成育場を開放することは、ニホンウナギの個体群回復に対して即効性が期待できる方策である。可動式の堰については、シラスウナギが遡上し、銀ウナギが降河する秋期から冬期にかけて、堰を開放することも有効な対策のひとつだろう。同時に、長期的な展望に立って必要性の低い構造物の撤去を進め、存続させるべきものについては、より水生生物の移動に影響の少ない構造に作り替えていくべきである。

提言10:河川と沿岸域の環境の質的改善
河川については、河岸に土と植生を復活させること、流路と水深の複雑性を取り戻すこととともに、遊水池を利用した治水を推進することが望ましい。沿岸域については、河口周辺の干潟の保全と回復が、ニホンウナギ個体群の回復には効果があると考えられる。

提言11:市民参加型調査を通じた情報共有
多様なステークホルダー間の情報共有を促進するにあたっては、市民参加型調査が大きな力を発揮する。地域が主体となり、行政や専門家とともに水辺の生物多様性の回復を目指す活動が広がれば、ニホンウナギの未来は、より明るいものになる。

この提言は2016年5月に刊行された拙著「ウナギの保全生態学」(共立出版)の終章「ニホンウナギの保全と持続的利用のための11の提言」に若干の修正を加えたものである。提言の根拠については、「ウナギの保全生態学」の該当箇所(終章に記載)を参照していただきたい。